徳島市で起きた痛ましい交通死亡事故も教訓とした安全策の強化である。事故の抑止に結びつけたい。

 国土交通省が、道路運送車両法に基づく保安基準を改定、施行した。後進する自動車に歩行者らが巻き込まれる事故を防ぐため、運転手が後方を確認できるバックカメラなどの装置を車両に搭載するよう、メーカーに義務付けたのが柱だ。二輪を除くほぼ全ての自動車が対象で、装置には運転手に音などで危険を知らせるセンサーも含まれる。来年5月以降に発売される新型モデルから適用になるという。

 サイドミラーやルームミラーによる目視では死角が生じるため、後方の安全確認にはバックカメラや検知センサーが有効だ。事実、車両への搭載は近年徐々に増え、それに伴い事故は減少傾向をたどっている。

 それでも、昨年の死傷事故は全国で1万6400件に及んだ。新たな保安基準の適用が、事故激減の追い風になることが望まれる。

 基準を見直す一因となったのは、2015年に徳島市で視覚障害者の山橋衛二さん=当時(50)=が、バックしてきたトラックにひかれ死亡した事故だ。連れ添っていた盲導犬ヴァルデスも犠牲になった衝撃は大きく、車両後退時の事故防止を求める機運が高まった。

 国交省は事故後、後方確認装置の車両搭載を国際基準とするよう国連の専門会議に提案。昨年末に採択されたのを受け、保安基準の改定に踏み切った。

 米国では一足早く10年に関連法が改正され、移行期間を経てバックカメラ搭載が完全義務化されている。国際基準化はむしろ遅かったくらいだが、大きな前進と捉えるべきだろう。

 山橋さんの事故では、トラックが後退を歩行者らに音声で知らせる装置を備えていたにもかかわらず、電源を入れていなかったことが厳しく指摘された。

 国連専門会議ではバックカメラなどに引き続き、周囲に警告音を発するこうした装置の国際基準化についても協議を重ねている。運転手側、歩行者側のそれぞれに注意を促す装置を備える二段構えが徹底されれば、事故リスクは格段に下がるはずだ。

 徳島県は事故の翌年、歩行者らに対する音声警告装置の適切な使用を義務付ける全国初の条例を制定し、法制化も求めた。国は国連会議の採択を待つことなく導入してもらいたい。

 山橋さんは生前、交通安全運動の式典で「盲導犬連れの歩行者を見たら運転に気をつけて」と訴えていた。対策は全ての人の安全につながる。遺志を受け継ぎ、手を尽くしていくことが求められる。