ほぼ完成した吉野川北岸の堤防=阿波市阿波町 ※ドローン撮影

 国土交通省が阿波市阿波町の吉野川北岸で工事を進めていた堤防が7月末に完成する。1885(明治18)年に本格的な治水事業が始まって以来、136年をかけて、国が整備の基準点とする岩津(同市)から河口までの下流区間40キロで南岸に続いて堤防がつながる。

 堤防は阿波町勝命地区などの延長約2・4キロで、樋門3基を備える。2012年度から事業費約27億5千万円をかけて整備した。04年の台風23号では吉野川の流量が岩津で戦後最大を記録し、この地域では民家8戸を含めて29ヘクタールが浸水する被害が発生した。堤防の整備により、当時を1割上回る流量となっても被害を解消できるとしている。

 九栗谷川の合流付近から0・6キロ下流までの区間については市が15年、建築基準法に基づく災害危険区域に指定。区域内の民家1戸が移転したことにより堤防整備の必要な区間が縮小し、工期を3年短縮した。

 地元にある明王院の曽我部大和住職(48)は「住民の悲願である堤防が完成してうれしい。寺も江戸時代に低い土地から移転するなど、地域は古くから『暴れ川』に悩まされてきた。長い治水の歴史を考えると感慨深い」と話した。

 岩津から池田ダム(三好市)までの上流区間では、無堤地区が北岸と南岸を合わせて10カ所ある。これについて国交省は17年に変更した河川整備計画で「おおむね10年間で着手可能」と示している。このうち、加茂第二(東みよし町)、沼田(美馬市)、半田(つるぎ町)の3カ所では整備が始まっている。完成時期は未定。

 一方、近年は気候変動による洪水のリスクが増しており、堤防ができても想定を超える洪水に襲われる恐れはある。国は地域全体で水害を防ぐ「流域治水」を推進。吉野川水系でも21年3月に計画をまとめ、水田に雨水をためる「田んぼダム」や農業ため池の事前放流、危険区域の土地利用規制などに取り組んでいる。

 吉野川の治水事業は、政府に招かれたオランダ人技師ヨハネス・デ・レーケが1884年に現地調査してまとめた「検査復命書」に基づき、国が直轄事業として85年に着手した。第十(石井町)下流の別宮川の川幅を広げて本流としたり、吉野川、阿波両市にまたがる川中島・善入寺島の住民約3千人を強制退去させて遊水地にしたりしたほか、堤防整備などを進めてきた。