三好市に移住し、起業して地域活性化などに取り組む西村さん=同市池田町内

 「自分の経験を生かして地域のために仕事がしたいという希望があった」。西村耕世(こうせい)さん(41)は2014年10月、家族で大阪から徳島県三好市井川町に移り住んだ。祖父母が暮らしていた井川町の空き家を管理するため、大阪から毎月通う生活を続けていたが、地方への思いもあって決断した。

 移住後すぐに市にサテライトオフィス(SO)を置く人事サービス会社「あしたのチーム」に入社。19年に退社し、現在は個人で人材コンサルティング業を担う傍ら、地域活性化支援会社を営む。西村さんは「三好市には移住者を受け入れてくれる土壌がある。自分のスキルを使って活躍している移住者が多いように感じる」と話す。

 急速に進む人口減少に歯止めをかけるには、若者の流出を食い止め、移住者を呼び込む施策が欠かせない。市は若い世代の雇用を生み出そうと、14年度からSOの進出企業に事務所賃借料や事務機器費を独自に補助するなど誘致を強化してきた。現在、IT関連企業など8社が市内にSOを置き、計28人を地元で雇用している。

 新卒者や移住者の市内企業への就職を促す補助金を15年度に創設。事業者、就職者双方に助成金を交付し、就職者に対して家賃を補助する内容で、20年度までに129人が活用した。

 市の空き家バンクを利用した移住者には、奨励金や改修費を補助する事業を16年度から始めている。20年度には、県内で初めて幼稚園から中学校までの給食費無償化を導入するなど、子育て支援策の拡充にも取り組む。

 県内移動を含む15~20年度の移住者数は135~227人と増加傾向にある。県外からの移住者だけを見ると、20年度は158人と24市町村で徳島、阿南両市、藍住町に次いで4番目に多い。

 一方、人口減の大きな流れは変わっていない。20年国勢調査の速報値では、同年10月1日時点の市人口は2万3608人。15年の前回調査から3228人減った。減少率は12・03%で、県内8市で唯一、10%を超えている。

 就職や進学のタイミングで市外へ出る若者は多く、転出者が転入者を上回る「社会減」が続く。県人口移動調査によると、19年は241人の転出超過で0・98%の社会減となり、減少率は県内で4番目に高い。少子化も深刻で人口千人当たりの出生率3・88(19年)は8市で最下位だ。

 市は総合戦略に基づき、40年時点で「1万4千人超」を目指して人口減少対策を進めている。戦略の第1期(15~19年度)は、40~50代層などに向けて生活環境や福祉を充実させる「生涯活躍のまち構想(日本版CCRC)」を大きな柱とし、地域交流拠点施設や月単位で移住体験できる「お試し住居」などを整備した。

 しかし、構想事業に伴う移住者は年間15~26人と限定的で、大きな成果を挙げたとは言いがたい。第2期(20~24年度)では若い世代の転出抑制と転入促進を最重要課題とし、構想事業を全世代に向けたアプローチに切り替えた。

 人口減が進めば地域から活力が失われ、地方交付税や税収の減少など市の財政に大きな影響を与える。減少のスピードを抑え、住民が住み続けたいと思う市の将来像を描けるかどうか。新市長の手腕が問われる。