2018年、徳島県内の講演会で講師を務めた堀越栄子さん。ケアラー支援の重要性を訴え続けている=阿波市

 「ケアラー」「ヤングケアラー」への関心が高まる一方で、どう支援すればいいのか分からないという声も多い。なぜ支援が必要なのか、現状や課題は―。ケアラーという言葉を日本で使い始めた一般社団法人日本ケアラー連盟の共同代表理事で、全国初の埼玉県ケアラー支援条例制定にも関わった日本女子大の堀越栄子名誉教授に話を聞いた。

 ―「ケアラー」という言葉を使う理由は。

 「介護」というと中高年の女性が行う高齢者介護(しかも相手は1人、主に身体介護)のイメージを持ちやすい。実際は介護者には男性もいるし、小学生~90代と年齢幅もある。感情のサポートが大変な場合もある。誰が誰を介護するのか、どんな内容の介護かを問わず、多様な全ての介護者を捉える必要があった。

 また「ケアラー」という新しい言葉や概念を示すことで「介護は家族がするもの」という規範・呪縛から介護者自身や社会を解放する狙いもあった。

 ―なぜ支援が必要か。

 ケアラー支援は個人的な問題ではなく、持続可能な社会には欠かせない。

 介護保険制度成立後、要介護者のためのサービスは拡充されてきたが、在宅介護を担うケアラーは「介護力」と見なされる。ケアラー自身を社会的に支援する法制度はない。

 ケアラーが自分のことを後回しにした結果、心身の健康不安、社会的孤立、離職、虐待など、さまざまな困難に直面した。晩婚化や少子化、単独世帯や2人世帯の増加などで家族規模は縮小し、子どもや若年層がケアラーとなっている。このまま続けば、医療費や介護費の増大、労働力不足、将来への不安を抱える若者の増加など、地域社会に与える影響も増すばかりだ。

 ―ヤングケアラー支援をめぐる動きが活発だ。

 子どもらしい当たり前の生活ができていない上に、「家族のせいで時間が縛られる」と思うことにすら罪悪感を持つ子どももいる。「自分の人生を第一に考えていいよ」と伝え、環境を整えることが大人の義務。

 埼玉など一部自治体が先行して取り組んでいるが、やはり政府の動きは重要だ。5月に公表された政府のプロジェクトチーム報告書では、教員や福祉・医療・介護などの専門職が連携してヤングケアラーを発見し適切な支援につなげる取り組みを行うとしている。

 政府が支援の必要性を認識し、社会全体で取り組む方向性を示したことは評価したい。ただ、具体的な支援計画はまだない。身近な市区町村でしっかりヤングケアラーを認識し相談支援を行える仕組みが必要だ。

 ―具体的な支援とは。

 例えば▽ヤングケアラーを発見しアセスメント(課題分析)を実施して、必要な支援につなぐ▽人材育成や研修・啓発▽ヤングケアラーやその家族、専門職ら誰もがアクセスしやすい相談窓口の設置▽支援事業の実施責任は自治体に置き、NPOや福祉法人なども担えるようにする―など。実行するには庁内に担当部署を設け、地域の実態把握調査(中高生のほか、小学生や不登校・ひきこもりも含む)が必要となる。

 ―今後の課題は。

 ヤングケアラー支援では対象が「18歳未満」に限定される。17歳と18歳の線引きは適切なのか。神戸市は20代も含めて「こども・若者ケアラー」として支援対象にしている。若者ケアラーである30代や中高年・高齢者らへの支援も欠かせない。どの年代のケアラーも取りこぼしてはいけない。

 また、ケアラーは多種多様。支援するには教育、福祉・介護、医療、労働、行政など多分野に関わり、総合的に判断できる人材が必要となる。埼玉県は支援計画(2021~25年度)を策定している。中でも、ケアラーのニーズを把握、分析する人材、支援をコーディネートする人材の育成に注力している。(おわり)

 ほりこし・えいこ 1951年生まれ。さいたま市在住。日本女子大家政学部卒。日本女子大名誉教授。一般社団法人日本ケアラー連盟代表理事、認定NPO法人さいたまNPOセンター代表理事を務める。共編著に「暮らしをつくりかえる生活経営力」(朝倉書店)などがある。