大型連休中に祖谷のかずら橋を渡る観光客。新型コロナウイルスの影響で通行者は激減した=5月、三好市西祖谷山村善徳

 世界の一流選手の力と技がぶつかり合った。2018年8月30日~9月2日、徳島県三好市池田町の池田ダム湖で開かれたウェイクボード世界選手権。アジアで初開催となる大会には34カ国の147人が出場し、約1万1千人の観客を魅了した。

 17年には市内の吉野川上流で国内初のラフティング世界選手権が催され、約1万9300人が詰め掛けている。大会誘致を進めた市にとって、従来掲げる「ウオータースポーツのまちづくり」をアピールする絶好の機会となった。

 大規模イベントだけではない。奥深い山中に集落が点在し、平家の落人伝説など独自の文化を築いてきた日本三大秘境の祖谷地方、美しい峡谷が続く国の天然記念物「大歩危小歩危」。豊かな観光資源を抱える市は、県内屈指の観光地として知られる。市は観光業を「リーディング産業」に位置付け、官民が連携して誘客に取り組んできた。

 香港や台湾などのアジアを中心に外国人観光客の増加も際立つ。17年に市内の主要5ホテルに宿泊した外国人は、10年前の約34倍に当たる1万8847人に上った。祖谷地方の名所「祖谷のかずら橋」(西祖谷山村善徳)の外国人通行者は19年度に5万5490人となり、5年間で3万4771人増えた。世界選手権開催や外国人客増で知名度が高まるなど市内の観光は盛り上がりつつあった。

 ところが新型コロナウイルス感染拡大により、市を取り巻く環境は大きく変わった。20年度にかずら橋を渡ったのは16万1365人と、19年度の半数以下に落ち込み、外国人は9割以上減の1256人にとどまった。

 市は観光客の激減を食い止めようと、20年7月から「Go To 秘境三好市トラベルキャンペーン」と題した観光支援事業を展開。独自に宿泊料などを割り引く内容で、20年度はキャンペーンを利用して延べ約1万7500人が宿泊した。21年度も継続して取り組んでいる。

 キャンペーンによる効果は少なくなかったものの、新型コロナの収束は見通せず、先行きは不透明だ。山城町西宇で遊覧船やホテルを運営する「大歩危峡観光遊船」の大平克之会長(66)は「昨年は遊覧船の乗船者が例年の3割ほどに落ち込んだ。全体の半数以上を占めていた外国人客はほとんど見なくなり、元に戻るのは当面難しいと感じている。コロナ後を見据えて行政と民間が連携を強化し、他地域との差別化を図っていくしかない」と話す。

 コロナ以前からの課題もある。市が18年度に行ったアンケートでは、観光客のうち市内で宿泊したのは7人に1人で、食事や土産物などの消費活動に十分つながっていない現状がうかがえる。祖谷地方や大歩危を観光してもすぐに他県に向かう傾向にあり、飲食関係者らからは「市内全域への波及につながっていない」との声も聞かれる。

 雇用を生み出し、外貨を得るための基幹産業となっている観光業。その行方は市の経済を大きく左右する。コロナ禍の支援策はもとより、収束後の活性化につながる施策も欠かせない。鍵を握るのは、確かな市の戦略だ。