内藤佐和子徳島市長は25日の定例会見で、4月から満額支給されている市長給与について「本年度は給与カットについては実施しない」と述べた。昨年4月の市長選では「給与50%カット」を公約のひとつに掲げて当選。昨年 6月から実施していたが、実は公約には「財政状況の好転が見られるまでの間」という但し書きが付いていた。市議会3月定例会で、市長は「財政状況に好転の兆しが見えてきた」として、削減率を15%に緩和する条例改正案を提出。緩和を阻止したい野党議員のほか、与党議員の一部が削減率をゼロに戻す目的で反対に回り、改正案は否決された。結果、4月から市長は給与を満額受け取っている。

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 給与を満額受け取ることは「公約違反」ではないか、と問う徳島新聞記者と市長とのやりとりは次の通り。

 

記者 一部市民から4月から満額給与になったことに「公約違反」との声がある。見解を。

内藤市長 給与については、議会で15%カット(議案)を提出した。議会によって否決された。議会の否決について重く受け止めている。

記者 3月定例会終了後に、「今後の対応も含め検討する」とのことだった。6月議会ではそうした動きはなかった。その点についてはどうか。

内藤市長 6月議会でも給与カットにかかる議論はでなかった。給与カットについてはもう実施しないことにした。

記者 では、今後も満額を受け取るということでよいか。

内藤市長 はい。

記者 選挙公約では50%カットを掲げている。これから満額を受け取ることで市民から「公約違反」との声が上がると思う。説明責任は果たすのか。

内藤市長 選挙公約は50%カットだったんですか。「財政状況が好転するまで」ですよね。財政状況は好転したんでしょうか。今回、基金の積み上げをしている。そうしたことも踏まえ、3月議会で15%カットを提案した。議会で否決された。議会で否決されるということは非常に重いと考えている。その点についてはどうか。議会が否決をした。つまり、議会が決めたということ。

記者 では、6月議会でも議論がなかったので、満額を受け取るということでよいか。

内藤市長 はい、今年度については。

記者 来年度については考える余地があるのか。

内藤市長 現時点では、実施するともしないとも考えていない。

 「選挙公約は50%カットだったんですか」と記者に問い掛け、「財政状況が好転するまで、ですよね」と畳みかけた市長。しかし、果たしてこの「但し書き」は有権者に浸透していたのだろうか。

 徳島市長選選挙公報を確認すると、「徹底した行財政改革のスタートとして市長給与を50%カットします!」とある。候補者の公約や主張をまとめた選挙公報は公費によって有権者に配布される。昨年の市長選では市選管が12万6千部作成している。広く配布されるこの選挙公報には「財政状況が好転するまで」といった説明は書かれていない。

 

 しかし、「50%カットします!」の下には「詳しい公約が載っているホームページはこちらから」という案内とともにQRコードが掲載されている。既にこのホームページは削除されているようだが、かつては次のような「7つの約束」が掲載されていた。

 

 給与についての部分をよく見ると、「財政状況の好転が見られるまでの間」という但し書きがあることが分かる。

 

 「財政状況の好転が見られるまでの間」。公約の給与50%カットに付されたこの但し書きは「給与50%カット」と同等に、分かりやすくアナウンスされていただろうか。されておらず、市民に浸透していなかったが故に、「公約違反」という声が市民から上がるのではないだろうか。