滑らかで濃厚な味や独特なパッケージが特徴の「充填こいまろ。」=佐那河内村上の村のおっさん桑原豆腐店

充塡豆腐「充填こいまろ。」

 「おっさん」を独特なタッチで描いたデザインが特徴的だ。驚くのはパッケージだけでない。箸ですくうと崩れそうなほど柔らかく、口に広がる濃厚な味わいもインパクトがある。「村のおっさん」(徳島県佐那河内村)が製造販売する「充填(じゅうてん)こいまろ。」。高温で煮ると、溶ける恐れがあるため「生食専用 加熱不可」とうたっている。

 原料は北海道産の大豆と佐那河内の水、にがり。豆乳を1日かけて冷蔵庫で冷やし、翌日、にがりを加えて液体のまま容器に密封した後、90分ほどかけて湯で熱して固める。大豆をすりつぶす工程を、通常1回のところ2回行う。2回目は1回目で出た豆乳を使うなどの独特な製造方法から、業界では「おっさん式」とも呼ばれているという。

 豆乳濃度は16%あり、一般的な商品に比べて濃い。口当たりが滑らかになって甘味が出るものの、機械のパイプが詰まりやすくなるため、実現は難しかった。桑原年朗社長(46)は「『手作り充填』での製造にこだわっている」。

 濃厚な大豆の味やコクが評価され、全国豆腐連合会が主催する「全国豆腐品評会」の第1回と第3回の充塡部門で1位を受賞。第5回の中国四国地区大会では、木綿や絹ごしなど全部門の中でトップに輝くなど実績を重ね、多くの人に知られるようになった。

 「充填こいまろ。」の原点となる商品が生まれたのは2007年。06年に事業を引き継いだ桑原社長が「よそにはできん、自分の豆腐を作る」と開発を始めた。県内の豆腐店をくまなく回り、濃厚で滑らかな豆腐作りに挑戦。試行錯誤の末、当時の設備で限界だった濃度13%の商品が出来上がった。

 当初、「豆腐魂」と名付けようとしたが、商標上の問題が確認され、「覚えてもらいやすいだろう」(桑原社長)という理由で「村のおっさん」として発売した。個人経営だった桑原商店も「村のおっさん」として有限会社化した。

 さらに高濃度な豆腐を求め、一般的な製造方法より低い温度で加熱するなど工夫を凝らし、15%前後のおぼろ豆腐の開発に成功。目指したのは「濃くてまろやか」な豆腐だったため「こいまろ」と改め、これ以上の質はないという意味で句点を付けた。

 パッケージは、偶然訪れた鳴門市の絵画展での作品が目に留まり、デザイナーにその場で依頼した。印象的なデザインによる差別化が奏功し、東京の有名飲食店で採用されるなど売れ行きが伸びた。

 そこで4日間だった賞味期間を伸ばそうと、日持ちする充塡豆腐への改良を決意。しかし多額の費用をかけて設備投資をした矢先、有名店から取引を打ち切られた。「投資を回収できるのか」。不安にさいなまれる中、救いとなったのは全国豆腐品評会だった。部門1位を獲得したことで注文が相次ぎ、県内のスーパーや飲食店などでも取り扱われている。

 製造を外部に委託した時期もあったものの、「納得できる味の商品を売りたい」と、製造は桑原社長が一人で手掛けている。全盛期は、1日当たり400丁を作っていた。

 今年に入り、改良を加えた充塡豆腐の新商品や、スイーツ用の豆腐を発売している。「今後もよそにないものが作りたい」。さらなる商品開発に余念がない。