基本合意の日の写真を手に、当時を振り返る全国B型肝炎訴訟原告団の小池真紀子さん=22日、大阪市

 注射器の連続使い回しによるB型肝炎の感染拡大について政府が責任を認めて謝罪し、被害者側と基本合意を締結して28日で10年。あの日、首相官邸で「人生を変えた被害の根深さを忘れないで」と訴えた徳島県那賀町出身で全国B型肝炎訴訟大阪原告団副代表の小池真紀子さん(69)=大阪府富田林市=は、偏見差別の解消や医療の充実によって未来を変えようと歩み続けている。「新型コロナウイルスにより誰もが感染症と関わる今こそ、私たちの歴史を知ってほしい」と願う。

 現在では国が「日常生活では感染しない」と周知するB型肝炎。小池さんは妊娠期の検査で24歳の時に感染を知った。入院中は自身の使う場所に「専用」と張り紙され、シャワーも浴びられなかった。幸福なはずの出産。疎外感を抱き、授乳しながら涙を流した。この体験で差別への恐怖心が植え込まれ、周囲に打ち明けられなくなった。

 偶然目にした肝臓病の患者団体の新聞記事が転機に。すぐに電話した。そこで訴訟を知り、仲間に支えられ、2008年に国家賠償請求訴訟の原告になった。

 11年6月28日に、国は「被害の発生・拡大を防止しなかった」と責任を認め、菅直人首相(当時)が謝罪した。和解条件を示す個別救済策、医療体制整備や偏見差別解消に向けた恒久対策と再発防止を国が約束し、基本合意を結んだ。小池さんは、うれしさと同時に「この日が始まり」と思った。当時の写真には厳しい表情が写る。

 出産当時は今と違い母子感染を防ぐワクチンがなく、娘と息子に感染させてしまった。恒久対策の実現で、未来を変えたい。活動の一つに大学や高校で、被害者が自らの体験を語る「患者講義」がある。

 患者講義は全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団により14年度に始まり、今年5月末までに452回行われ、4万5171人が聴講した。対象は医学部や看護学部、薬学部も多いという。

 40年続いた注射器使い回し。妊娠や治療の際にもつらい体験をした小池さんは、講義の最後に「二度と繰り返さないよう、歴史を忘れないでほしい。もし同じようなことがあったら声を上げてほしい」と伝えている。