【ブナ】太く背の高い幹、頭上を覆う緑の葉が圧巻だ。真下にいると雨の当たり具合も弱く感じられる

 徳島県那賀、上勝町境にそびえる高丸山(標高1438メートル)は、三角の山容も美しいが、標高1000メートルの中腹付近から山頂にかけて広がるブナなど広葉樹の原生林が見応えのある山だ。

 徳島市内から1時間半ほどで行くことができ、登山口まで車道も通じることから、訪れやすい高峰として知られている。徳島県が森と人との共生を目指す「千年の森」に指定し、登山道や関連設備が整備されていることも手伝って、登山経験がなくても楽しめる。

 梅雨の最中、雨の日を狙って高丸山の原生林を訪ねた。標高が高いため、まだ新芽が出そろったばかりの林の中で雨に打たれる緑は生き生きと輝き、青空の下で見る緑よりもひときわ鮮やかに見える。

 原生林を構成する代表的な木、ブナを下から見上げれば、低層域のカエデなどよりひときわ樹冠が大きく、迫力に圧倒される。葉に落ちた雨が幹を伝い、地面に集まる様も見ることができ、森の息吹が感じられる。

 残念なのはシカの食害だ。訪ね始めて30年近くになるが、木々の根元を埋めていた草が年を追うごとに姿を消している。ネットで保護された中だけに残る姿を見ると、自然のバランスがいかに重要かが目に見える。

【こけむす】県内でも雨量の多い高丸山。そのためか原生林の中の岩はほぼ緑のコケに覆われている
【保護される植生】シカの食害から守るためネットの中で育つ植物。中と外での違いが一目で分かる場所だ
【ヤマアカガエル】登山道のコケの上に姿を現したヤマアカガエル。雨の日にはほかにもカタツムリや湿気を好む昆虫などの姿を随所で見かける
【境界】高丸山から北東に続く尾根道。人工林(左)と自然林(右)の境界線を通る。自然林の植生の豊かさが一目で分かる場所
【流れの始まり】葉の先にたまった一滴の雨水。この水は地面に集まり、やがて森の中を通って谷の流れへと姿を変えていく