特別支援学校向けの消費者教育用教材を試用した授業=2020年12月、小松島市のみなと高等学園(消費者庁提供)

 消費者庁が徳島県庁内に恒常的拠点「新未来創造戦略本部」を設けて7月末で1年になる。デジタル社会に対応した消費者教育の教材を開発するなど、全国展開を見据えたモデル事業を進めている。一方、新型コロナウイルス感染拡大で人の移動が制限される中、体制拡充による地域活性化の効果はまだ見えない。

 業務の柱の一つは、前身の「消費者行政新未来創造オフィス」に続き、全国での施策展開に先立つモデル事業の実施だ。2022年度の成人年齢引き下げを前に、デジタルサービスを介した若者の消費者トラブルを防ごうと、県内の有識者と連携して教材を開発した。国府支援学校やみなと高等学園の協力を得て、特別支援学校向けの教材も作成。県内と広島市で通信アプリ「LINE」を使った消費生活相談の実証実験を行うなど、10余りの事業に取り組んでいる。

 その半面、新たな役割として期待されている国際業務は思うように進んでいない。インターネット取引の広がりで国境を越えた消費者問題に対処するルールづくりが世界共通の課題となっているのを受け、消費者法制の国際比較を研究テーマに掲げた。しかし、コロナ禍で海外との往来ができず、研究は文献調査などにとどまっている。3月に国際共同研究の第1弾としてタイなどアジア4カ国とオンラインで結んだ国際シンポジウムを開き、今後の打開策を探っている。

 戦略本部次長の日下部英紀審議官は「コロナがなければ、もっと地域に出て課題に取り組んだり、海外の研究者を招いたりしたかった。今後も県の協力を得ながら、しっかり成果を出していく」と語る。

 人の流入による地域への影響は明らかでない。県によると、全国からの視察者数は19年度に326人(うち海外69人)だったが、20年度はコロナ禍で72人(海外ゼロ)に減った。昨年11月に県内で予定していた200人規模の国際フォーラム(県主催)は開催を断念し、動画配信にした。

 戦略本部への移行に伴ってオフィス時代に50人だった職員は80人に増えた。だが、常勤でない客員研究員や県内自治体からの出向者も多く、消費者庁職員と他省庁、他県からの出向で県外から移住した人は20人ほどにとどまる。

 県消費者くらし安全局の平井琢二局長は「社会のデジタル化で消費者庁の役割は増しており、省への格上げを提言している。戦略本部がさらに拡充され、県民に地方創生の効果や暮らしやすさを実感してもらえるよう取り組んでいく」と話している。

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 消費者庁は5日午後1時半から、戦略本部の開設1年を記念したシンポジウムを徳島市の徳島グランヴィリオホテルで開く。「デジタル社会と消費者行政」をテーマにした講演やパネル討議があり、同庁ホームページからオンラインで視聴できる。

 新未来創造戦略本部 2017年から消費者行政新未来創造オフィスでの3年間の試行を経て、消費者行政の調査・研究の恒常的拠点として県庁10階に開設した。先駆的な取り組みの試行や施策効果の検証を行う「実証グループ」と、デジタル化や高齢化など社会情勢の変化による新たな課題に取り組む「国際消費者政策研究グループ」を置く。首都圏で大規模災害が発生した場合に本庁機能を代替する役割も担う。