静岡県熱海市伊豆山で3日に発生した土石流災害は「山津波」の威力をまざまざと見せつけた。徳島県内でも、同様の被害が起きる可能性のある「土石流警戒区域」が松茂、北島、藍住を除く21市町村に2千カ所以上ある。専門家は「ひとたび発生すると甚大な被害が想定される。早め早めの避難を心掛ける必要がある」と警鐘を鳴らす。

 県内に1万2401カ所ある土砂災害警戒区域(3月末時点)のうち、土石流警戒区域は2262カ所。阿南市と那賀町がいずれも318カ所で最多。三好市の252カ所、徳島市の244カ所と続く。住民の生命に著しい危害が生じる恐れのある特別警戒区域は1935カ所に上る。

 徳島大の西山賢一准教授(地質学)によると、土石流は豪雨時に山腹崩壊などで発生した土砂が谷筋に流れ込み、多量の水と共に山腹を流下する。時速は30~50キロ。いったん発生すれば避難は難しく、被害規模や範囲も大きくなる。複数地点で同時に発生しやすいのも特徴だ。県内では2004年に那賀町で民家が流されて70代夫婦が犠牲になった。

 人口が密集する地域は特に警戒が必要だ。徳島市の場合、眉山周辺が最も危険性が高く、特に北側や東側の斜面は傾斜が急なため被害が甚大化する恐れがある。西山准教授は「数十年間発生していないからといって安心はできない。山際やその周辺に住む人は居住地域が警戒区域になっていないかをまず確認し、豪雨時は速やかに避難してほしい」と呼び掛ける。

 避難の指針として、気象庁がホームページなどで発表する土壌雨量指数と土砂災害警戒情報を挙げる。熱海市では土石流発生まで1時間雨量が30ミリを超える激しい雨が観測されず、避難指示も発令されなかった。一方、発生の10時間前には土砂災害警戒情報が発令され、土壌雨量指数も5段階中最上位の「極めて危険」な状態だった。西山准教授は「発令を待つのではなく、指針を参考にして発令前に避難を完了させておくのが理想だ」と語る。

 土石流発生が降雨のピーク後だったことにも注意を促し、「雨が弱まったから大丈夫というわけではない。大規模な土砂災害ほど時間差で発生するケースが多い。避難は大雨警報や土砂災害警戒情報が解除されるまで継続する必要がある」と訴えている。