岡本太郎の壁画「いのち躍る」。瀬戸内寂聴さんが名付けた=徳島市川内町

 今年は岡本太郎(1911~96年)の生誕110年、没後25年の節目の年である。生前の太郎は、徳島市出身の小説家・瀬戸内寂聴さんと親しかった。そんな2人のコラボレーション(合作)とでも呼べる作品が同市川内町にある。

 大塚製薬徳島研究所内のハイゼットタワーの壁面を飾る「いのち躍る」だ。1983年、研究所の中核施設となるセンターの完成に合わせ、同社が太郎に原画制作を依頼。大塚オーミ陶業信楽工場(滋賀県)で焼き上げ、縦21㍍、幅10㍍の巨大壁画に仕上がった。

 命名者の瀬戸内さんは、太郎の母で歌人・小説家として著名な岡本かの子の評伝『かの子撩乱(りょうらん)』を執筆するため、太郎に長期間の取材をしている。

 東京・南青山のアトリエ(現・岡本太郎記念館)に足しげく通ううち、太郎から秘書になることを勧められた。小説家として食っていくと決意していたため断ると、返ってきた言葉が「バッカだなあ。つまらん小説書いてるより、世界の天才岡本太郎の芸術を助ける方がずっと女として生きがいがあるのに!」。瀬戸内さんの交遊録『奇縁まんだら』(日本経済新聞出版)などに出てくる、ファンの間では有名な逸話だ。

 「いのち躍る」は、そんな2人が生んだ“徳島を代表するパブリックアート”である。

〈2021・7・13〉