「毎日残業があるが残業代が支払われない」「家に仕事を持ち帰り、オンオフの境がない」「早めに育休を切り上げる人も」―。徳島県内の保育士や保護者らでつくるグループ「ほなけんな」が、保育士や幼稚園教諭を対象に実施した労働環境を尋ねるアンケートで、人手が足りない職場で仕事に追われる実態が浮かび上がりました。回答者の77%が「やめたいと思ったことがある」と答えています。ただ、86%は「やりがいを感じている」としています。保育現場からアンケートに寄せられた声に耳を傾けてみてください。

 「ほなけんな」は昨年9月、保育士の福井美里さん(30)、会社員の大西実希さん(33)=いずれも徳島市=が設立しました。メンバーは30人あまりで、保育に関する情報交換をしています。

 設立のきっかけは大西さんの長男が保育所で骨折したことです。保育所とやりとりを重ねる中で、保育士の労働環境の見直しが必要だと考え、友人の福井さんに相談。改善に向けて自分たちで動き出すことにしました。

ミーティング中の福井さん(左)と大西さん=藍住町内

 アンケートは1月から2月末まで実施し、5月末に報告書にまとめました。回答者は261人で、うち県内在住者が240人、男性が24人。133人(回答者の51%)は私立の認可施設、62人(24%)は公立施設にそれぞれ務める保育士・幼稚園教諭。17人(7%)は認可外施設の保育士、49人(19%)は資格はあるものの勤務していない潜在保育士・幼稚園教諭でした。

 残業が「頻繁にある」「ときどきある」としたのは、公立施設勤務者の78%、私立認可施設勤務者の70%、認可外施設勤務者の55%。一方で、残業代が「支給されない」とした回答者がそれぞれ32%、58%、28%いました。

 全体の86%は仕事を家に持ち帰ることが「頻繁にある」「ときどきある」と回答。81%は保育の物品を自費購入することが「頻繁にある」「ときどきある」としています。

 残業については、「個人情報が含まれた書類は持ち帰ることができず、サービス残業している」「時間になっても帰れない雰囲気。毎日残業があるのに残業代は支払われない」といった声が寄せられました。そのほか、「勤務中は休憩がなく、家にも仕事を持ち帰る。オンオフの区別がない」「人が足りないからと早めに育休を切り上げる先輩がいた」という嘆きもありました。

 保育の仕事をやめたいと思ったことが「頻繁にある」「ときどきある」と答えたのは全体の77%。一方で、仕事にやりがいを「すごく感じる」「感じる」とした回答者が86%いました。

 アンケート結果をどう見たか。代表の福井さんに聞きました。

息子さんとインタビューの場所に来てくれた福井さん。息子さんはお昼寝中です=徳島市内の新聞放送会館

 ― アンケート結果をどうみましたか。

 そうだよな、と思う結果です。どんな調査を見ても、回答は毎回ほぼ同じ。「命を守っている」と自覚できる給与ではないという点がまず、出てきます。勉強をして資格も取っているのに報われていません。男女問わず、「いつかやめる」という人が多い。

 慢性的な人手不足で、「出産時期を考えて」とまで言われることもある。子どもが好きなのに、子どもが産めない状況です。

 ― 今の保育士不足を解消するには、資格を持っていても働いていない潜在保育士の方にまた働いてもらう方法がひとつ、あります。潜在保育士からはどんな声が目立ちましたか。

 やはり給与面での改善を求める声が多い。子どもたちを大切にできる余裕、保育の「質」が保障できる職場環境を求める意見もありました。

 ― 今後、どんな取り組みを続けていきますか。

 「ほなんけんな」には、保育士や潜在保育士、幼稚園の役員をしている人ら子どもに関わる人が集まっています。今はオンラインが中心ですが、交流会をもって皆が抱える悩みを言ってもらったり、いいなと思える保育について話し合ったりしています。

 保育士をしていても別の施設で働く人や幼稚園教諭と知り合う機会が少ない。子どもに関わる人たちが集まり、みんなで子どものことはもちろん、自分を見つめ直す場にし、笑顔を増やしていきたいと思っています。

 メンバーの大西さんが子育て環境の改善を目指す「Smart Sunny」という別の団体を立ち上げています。こちらの団体は行政や議員へも働きかけながら、処遇改善を図っていく方針です。

 子育てが終わると保育関係のことは自分と無関係になると思う人も多いかもしれません。でも、保育に関わる人の働き方改革は、みんなの未来を変えることにつながります。大げさに聞こえるかもしれまんせんが、保育の軽視は未来をないがしろにしているということ。多くの人に関心をもってもらえる活動を展開したいと思います。

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