徳島大発のベンチャービジネスとして、「食用コオロギ」事業が注目を集めている。

 高タンパク源の確保や環境負荷の低減など、国連のSDGs(持続可能な開発目標)の達成に資する試みとして、期待したい。

 食用の「フタホシコオロギ」の飼育や、食材用パウダーの生産・販売などを手掛けるのが、2019年創業のグリラス(鳴門市)だ。

 徳島大は、食用コオロギに関する特許や技術を移管。同大バイオイノベーション研究所の渡邉崇人助教が代表取締役に、三戸太郎准教授が取締役に就任している。

 先月、自社ブランド「C.TRIA(シートリア)」を立ち上げ、コオロギパウダー配合のクッキーとチョコクランチを売り出した。

 徳島空港の物産店ではユニークな徳島土産としてよく売れており、先月の欧風産直市・とくしまマルシェでも注目を集めたという。

 現在は、自社サイトのネット通販や一部量販店での店頭販売が中心で、今後販路が広がれば、売り上げ増につながるだろう。

 大学発ベンチャーであるグリラスが企業理念としているのが「食を切り口としたSDGsへの貢献」だ。

 例えば粉末状のコオロギパウダーの7割はタンパク質で、地球規模での飢餓対策に有望な食材である。

 畜産業に比べて、コオロギは飼育に要する水や飼料が少なく、環境への負荷が格段に小さい。牛と違って地球温暖化の要因となるメタンガスも出さない。

 さらに雑食性なので残渣(ざんさ)で飼育でき、フードロスの低減に寄与する。

 こうした点がSDGsの17目標のうち「飢餓解消」「気候変動対策」などに貢献するという。地球環境を守り、自分たちだけでなく、将来世代までもが豊かに暮らせるための意欲的な事業といえるだろう。

 雇用創出にも積極的に取り組んでいる。

 鳴門本社で働くのは、パート・アルバイトを含む約15人。美馬市の旧芝坂小学校廃校舎を活用した美馬ファームでも約10人が働いており、今秋の本格稼働後は30人規模の雇用を見込む。

 鳴門では障害者施設への作業委託も行い、福祉面にも力を入れている。

 課題は、まだなじみの薄い「昆虫食」を受け入れる消費者層をどうつくりだし、新たな食習慣として根付かせていくかにある。

 そのためにはまず、抵抗感なく口にしてもらうための仕掛けやアイデアが必要だろう。

 事業は始まったばかりである。地方の大学から産声を上げた小さなベンチャー企業の、大きな志と大胆な事業展開を見守りたい。