阿波踊りで親睦を深める元捕虜の子孫と鳴門市民ら=同市撫養町の市民会館

 ベートーベン「第九」のアジア初演100周年記念事業のフィナーレを飾る演奏会(鳴門市、認定NPO法人鳴門「第九」を歌う会主催)が3日、同市撫養町の市文化会館で開かれた。出演者と板東俘虜(ふりょ)収容所の元ドイツ兵捕虜の子孫らによる交流会も近くの市民会館であり、友好への思いを確かめ合った。

 演奏会では、日独の合唱団約600人が徳島交響楽団の演奏に合わせ熱唱。アンコールでは観客も「歓喜の歌」を歌い、会場は感動の渦に包まれた。交流会には約800人が参加。泉理彦市長が「次の100年へのスタートにしよう」と乾杯の音頭を取った。

 父と伯父が捕虜だったジームズ・ジームセンさん(77)=ハンブルク=は「政情が不安な今こそ、板東の歴史に学ぶことは多い。演奏会や交流を通し、それを実感した」と話した。

 会場では地元連による阿波踊りも披露され、子孫や市民も一緒になって踊った。2日の演奏会に出演した江本富久栄さん(80)=同市撫養町立岩=は「言葉は分からなくても第九と踊りで一つになれた。最高の気分」と笑顔だった。