阿波藍から染め出される「ジャパンブルー」の魅力を発信する大型空間芸術作品「阿波藍アート・藍のけしき」(徳島県制作)が、米ワシントンにある「スミソニアン・アメリカ美術館」のレンウィックギャラリーで展示中だ。世界各国の藍ファンが制作に加わったアートプロジェクト。現地の人たちからも「心が癒やされる」などと好意的な声が寄せられている。展示は8月16日(日本時間17日)まで。

Installation shots of Forces of Nature: Renwick Invitational 2020, Renwick Gallery of the Smithsonian American Art Museum, 2020, courtesy of the Smithsonian American Art Museum, photo by Rowland Ricketts.

 作品は、阿波藍で染めた約450枚の布(30センチ四方)をドーム状につるしてライトアップした。県内では2018年にお披露目されている。プロジェクトを手掛けたローランド・リケッツさん(50)=米インディアナ大エスカナジー美術デザイン建築学部副学部長=は「藍の色あせを通して、新たな藍の美しさと可能性を知ってもらいたかった」と狙いを語る。

ローランド・リケッツさん

 制作には徳島をはじめ、英国、米国、イタリア、ドイツなど10カ国約450人が公募で参加した。徳島で染めた藍染の布を1枚ずつ、中央に穴を開けた厚紙の箱(縦横34センチ、高さ2センチ)に入れて参加者に送付。17年8月から約5カ月間、さまざまな気候の国や地域の参加者とともに過ごすうち、布はその表情を変化させていった。

 この布を徳島に戻し、一つのアート作品に仕上げたのがリケッツさん。思い入れのある作品となり、米スミソニアン美術館から企画展の招待作家に選ばれた時にも「展示するなら『藍の―』しかない」と美術館に申し入れた。

 当初は20年7月から21年2月までの展示を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で開始が10月に延び、さらに11月には一時中断を余儀なくされた。それでも、21年5月に再開されてからは、作品を見た人たちが会員制交流サイト(SNS)を通じて「楽しいイベントだった」「癒やされた」などのポジティブな感想を発信してくれている。

 「藍は昔から世界中の人々に愛され、人と人をつなげてくれる大切な存在」。リケッツさんは藍の魅力をそう表現する。

 展示された藍染の布には世界各地での暮らしの記憶が宿る。浮かび上がるのが、布とともに過ごした人たちのぬくもりだ。ソーシャルディスタンスが求められる今だからこそ、その空気感に心が安らぐのかもしれない。

Rowland Ricketts with Norbert Herber and 450 participants, Ai no Keshiki - Indigo Views, 2017-18 and 2020, faded indigo cloth and sound, dimensions variable, Collection of the Citizen’s Cultural Division, Tokushima Prefectural Office, until each cloth is returned to participants. Installation view, Renwick Gallery, 2020. Photo by Ron Blunt. Additional support for this installation was provided by the Tokushima Prefectural Office.

 

藍のある暮らし~プロジェクトに参加して~

後山みどりさん 牟岐町

 

 新聞でプロジェクトを知って申し込みました。藍染の布を出羽島に連れて行ったり、港で写真を撮ったりして、あえて海風にさらしました。風に当たった部分には色の変化があり、染めの面白さを感じることができました。藍色は気持ちの落ち着く色です。米国展示は、海外の方に「藍」を知ってもらう良い機会になると思います。

 

 

キャロル・リードさん 米・ペンシルベニア州 

 

 自分のスタジオに藍がめを二つ持ち、日頃から藍染Tシャツや洋服、スカーフを愛用しています。藍は魔法のようです。染色する際に酸化して起こる色の変化は見事です。それは色あせた時でさえ全てが楽しく素晴らしいと思います。藍染の布が世界中に行き渡り、最後には一つの場所に戻るという取り組みは興味深いものでした。

 

 

サリー・バーチさん 英・グロスターシャー州

 

 藍染の布と過ごす5カ月間、私は布に一切干渉しませんでしたが、布はまるで生き物のように、刻々と変化する光に反応していました。布が徳島に帰る前、雪が積もる庭を背景に撮影しました。夏からずっと一緒に過ごしたので、英国の季節の移り変わりも経験したことになります。スミソニアン美術館で展示されたことをとても誇りに思います。