小児がんや無毛症などで髪を失った18歳未満の子どもに医療用ウイッグ(かつら)を贈る活動「ヘアドネーション(髪の寄付)」。4月に徳島県内の男子小学生が髪を伸ばして寄付した記事を掲載したところ、多くの読者から反響が寄せられた。このうち娘と共に髪を伸ばしている最中と記した手紙を本社に寄せた美馬市の女性を訪ねた。ヘアドネーションに取り組む大阪市のNPO法人や吉野川市の美容室でも現状を聞いた。髪のリレーは、「困っている人の役に立ちたい」と思う人たちの心のリレーでもあった。

共に髪を伸ばし続ける香西亜弥さんと桃さん=美馬市美馬町滝ノ宮

 美馬市美馬町滝ノ宮の香西(こうざい)亜弥さん(28)=パート従業員=が取り組もうと決めたのは1月。ヘアドネーションに関する新聞やテレビを見たのがきっかけ。「以前、長く伸びていた髪を切った時に、床に落ちた大量の髪の毛を見て、すごくもったいないなと思った。伸びた髪が役に立つなら自分たちにもできる」と、娘の桃さん(10)=美馬小学校5年=にも声を掛けた。

 そんな最中に男子小学生の記事を読み、思わず筆を執った。手紙には、手入れが大変で何度も切りたいという衝動に駆られているという心境をつづった上で「男の子の堂々とした顔を見て『頑張れ』と背中を押されたような気持ちになりました」と書かれていた。

 亜弥さんは寄付できる長さまであと10センチほどだが「切った後、あんまり短すぎても困るので、できるだけ伸ばそうかなと思っている」。桃さんは「ロングヘアーには憧れていたため、うれしい」と話し、二人三脚で寄付できる日を待ち望む。

 

 大阪市の普及団体 JHD&C
 1人のかつらに20~30人分 ■ 長さ50センチ以上が不足

 NPO法人「Japan Hair Donation&Charity(JHD&C=ジャーダック)」は、大阪市の地下鉄御堂筋線・中津駅に近いマンションの一室にある。大きな袋が所狭しと積まれており、渡辺貴一代表理事が「この中には髪が入っているんですよ」と教えてくれた。

 中を開けると、髪が入った封筒が詰め込まれている。あまりに多いため、郵便局が袋に入れて届ける。1日平均で150~200通に上り、仕分け作業が追いつかないのが現状だ。

 1人のウイッグを作るのには20~30人の髪が必要。希望者のところに出向いて頭の形を採寸する人員が少ないため、年々待機者が増加している。現在255人で2、3年待ちになっている。

 NPOを設立したのは2009年。渡辺代表理事が美容室を開業するのに合わせ、「何か社会貢献できないか」と考えていたところ、米国で広がっていたヘアドネーションを知った。「捨てていた髪が人の役に立つ。美容師だからこそできるのではと思った」

 しかし、日本では例がなく手探りの状態で、初めての提供は3年後の12年だった。これまでの提供者は267人に上る。
 

連日多くの髪の毛が届き作業に追われるJHD&C=大阪市北区


 徳島県内からの寄付は、年間100件以上とみられる。県内の希望者への提供も1人に実現しており、別の1人が待機している。

 ウィッグを待ち望みながら亡くなった人もいる。一人でも多くの人に届けたいと活動する一方で、渡辺代表理事の願いは「ウイッグの提供が要らない世の中」と言う。「ありのままでも生きにくくない社会になってほしい」と力を込めた。

 JHD&Cに寄付できる髪は「長さ31センチ以上」が条件。ロングヘアーを希望している人が多いため、50センチ以上が不足している。「長いほどありがたい」としている。髪を送付してくれる賛同美容室が全国にあり、県内は18店。他の美容室や自宅で切って直接送ることも可能。賛同美容室の一覧やカットの仕方、送付方法などはホームページに詳しく記載されている。
 

僕の髪を役立てて 藤原君(徳島・八万小5年)ヘア・ドネーションに協力