都道府県庁、警察署、市役所―公務員が働く「官公庁」は、とかく一般市民にとって近寄りがたいイメージがある。しかしそうした場所の中にも食堂は存在し、そこで働く人の食欲を満たす。そして、それら食堂は関係者以外も気軽に利用できるところが少なくない。それならばと、県内にある一般利用可能な官公庁食堂を食べ歩き。各食堂の紹介とお薦めメニューを「食リポ」するシリーズの第1回は、新装移転した徳島中央警察署(徳島市徳島町1)の食堂を訪ねた。

中央署の正面玄関を入ってすぐ右側にお目当ての食堂がある=徳島市徳島町

 中央署内にある食堂の広さは、約100平方メートルで全48席。小さな売店や自動販売機もあり、店内は清潔感が漂う。

 食堂の現場責任者である島村康稔さん(61)=徳島市八万町大坪=は「安くて量が多いのが売り」と話す。メニューの数は日替わり定食と朝定食を含めて全12品。カレーライス、各種うどんからとんかつ定食まで食堂らしいメニューが並ぶ。

セルフカウンターで自分でトレーに取って運ぶ=徳島市徳島町

 価格は一品あたり300~550円。白ご飯を盛る茶わんは大中小3種類あって好みの量を調整できるシステムになっている。

 食堂の一番人気はA・B2種類の日替わりランチ。栄養士が一週間単位で献立した料理は栄養のバランスがとれており、ボリュームも満点。1日60~70食限りで、午前11時に提供を始めるや、正午過ぎにはほぼ売り切れ状態になる人気ぶりだ。

 一般客の利用は、移転前は全体の1割程度だったが、移転後は急増している。現在は6~7割が一般客で、署員だけでなく、徳島市役所や徳島中央郵便局の職員、近くの企業の会社員らも多いという。

島村さんら調理スタッフ3人で厨房を切り盛りしている=徳島市徳島町

 島村さんは、南新町にあった「島村食堂」の元店主。既に廃業したものの、周辺の交番などに勤める警察官の御用達として祖父の代から50年近く愛されていた。島村さんは父の泰司さんと共に17年前から中央署(東署時代も含む)の食堂で働いており、7年ほど前に父から引き継いだ。

 その頃から調理し、庁舎移転後も引き続き変わらぬ味で提供し続けているのが「唐揚げ定食」だ。島村さんは「旧庁舎時代からの味を残したオリジナル」と力を込める。小麦粉とかたくり粉の配分を1:1にして一度揚げた後、冷ます時間を長めにとって二度揚げする。それによりカラッと仕上がり、サクサクの食感を作り出している。味付けとして加える少量のニンニクも効いており、署員はもちろん、毎日食べに訪れる常連客もいるという。

 旧庁舎時代は週に1日だけの販売だったが、現在は定番メニューになっている。

旧庁舎時代からの味を残した唐揚げ定食=徳島市徳島町

 そんな話を聞いてしまったら「唐揚げ定食」を食べるしかない。唐揚げ5個に付け合わせの千切りキャベツ。白ご飯とみそ汁と漬物、そして日替わりの小鉢が付いて500円。

 なるほど、ほんのり香るニンニクの匂いが食欲をそそる。むむ、パリパリに揚がった皮の部分が無造作にせり上がり、「食ってくれ」と言わんばかりに自己主張しているではないか。ならばそれに応えよう。まずは一口。カリッとした食感に味付けも効いている。なんとも期待が膨らむ。

唐揚げは外がカリカリで、中身がジューシーというコントラストが絶妙

 いよいよ鶏肉本体へ。外側の衣はカリッと仕上がっており、サクサクッとした歯ごたえが心地よい。ところがどうだ、中の鶏肉はほんのりと肉汁がにじむ、ふんわり柔らかな仕上がり。絶妙なコントラストが生み出す「カリッ」と「ふわっ」のハーモニーに食も進む。この日の日替わり小鉢「インゲンの酢みそあえ」も酸味が効いていて箸休めにぴったりだ。

 とうとうから揚げもラスト1個。最後の仕上げは自己流で、千切りキャベツと一緒に食べてみる。調味料は断然マヨネーズ。ニンニクの風味がまろやかになってこれもまた良し。気が付けばあっという間に完食と相成った。

手作りの唐揚げを手にほほ笑む島村さん=徳島市徳島町

 近頃は夏バテ気味で食欲もいまいちなかったものの、食べ始めたらボリュームたっぷりの唐揚げに胃も心も満たされて活力がみなぎってきた。「島村さん、おいしかったですよ」。そして私は次なる官公庁食堂を求めて中央署を後にしたのだった。

 営業時間は午前8時半~午後5時(ラストオーダーは午後4時半)。朝定食は午前8時半~同11時。日替わり定食は午前11時~。定休日は土日祝。