倫理観の欠如にあきれ、犯行の悪質性に驚く。

 新型コロナウイルスの影響で売り上げが減少した中小企業などを支援する「家賃支援給付金」600万円をだまし取ったとして、経済産業省のキャリア官僚2人が詐欺容疑で再逮捕され、懲戒免職となった。

 2人は先に同給付金約550万円を詐取した容疑で逮捕、起訴されていた。さらに別の給付金200万円も受給しており、詐取総額は約1350万円に上るとみられる。警視庁には余罪も含め、徹底した捜査を求めたい。

 コロナ禍では多くの事業者が深刻な打撃を受けている。手続きが煩雑で書類の不備から給付金を受けられなかったり受給が遅れたりする人の苦情も聞かれる。

 そんな苦境をよそに、制度を作る側にいて抜け道を知り尽くす官僚が知識を悪用して不正に手を染めるとは言語道断で、許し難い。

 2人は私立大付属高校の同級生で、ともに難関大学を出て入省した20代の幹部候補だ。私利私欲にまみれた2人の行為からは国民全体の奉仕者としての規範意識など、みじんも感じられない。

 捜査関係者によると、2人は自宅などを会社事務所として偽り、毎月計約200万円の家賃を払っていると給付金を申請するなどしていた。会社はペーパーカンパニーで家賃は払っていなかったとみられる。

 うち1人は都心のタワーマンションに住み、外車や高級腕時計を所持していたという。不正受給した金をマンション家賃などに充てていたようだ。

 調べに対し、2人は「相談してやった」と容疑を大筋で認めている。コロナ給付金の詐取事件摘発が全国で相次いでいたこともあり、申請に使った可能性がある電子データの一部を廃棄したとみられる。周到な証拠隠滅だ。

 首をかしげるのは、梶山弘志経産相が陳謝したのが2人の最初の逮捕から3日後だったことだ。企業であれば存続にも関わるほどの大問題なのに、危機感が欠けている。関係者の処分だけで済ませることなく、徹底的に事件を検証して再発を防がねばならない。

 官僚の不祥事が相次いでいるのが気がかりだ。

 経産省では、別の職員が4月に国会議事堂の女性トイレを盗撮した事件があったばかり。総務省や農林水産省の接待問題、森友学園問題を巡る財務省の公文書改ざん事件などが起き、官僚が国会で虚偽答弁を繰り返す場面もみられる。

 官僚を萎縮させるゆがんだ政治主導が、若手官僚の士気や倫理観をそいでいないか。政官の在り方を見直す必要があろう。