「忖度」が本紙に登場するのは2001年以降、16年までに55件しかない。それが17年に入ると1年間で172件に急増し、今年は5月末までで既に100件を超える(本紙データベース)。森友、加計問題のキーワードとして使われ始めたからだ

 元は<他人の心中やその考えなどを推しはかること>であって、善悪どちらにも偏らない中立的な言葉である。「日本国語大辞典」(小学館)は、福沢諭吉の「文明論之概略」から用例を引いている

 <他人の心を忖度す可らざるは固より論を俟たず>。人の心を推し量ることができないのは、もとより言うまでもないとある。それはそうであっても、そうもいかない場面があるようだ

 森友学園への国有地売却を巡る決裁文書の改ざんで、財務省がまとめた調査報告書は、安倍晋三首相が夫妻の関与を全否定した国会答弁を契機に、学園側との交渉記録を廃棄したと認めた

 文書改ざんや廃棄は「国会質問を極力少なくするため」だそうである。首相の立場をおもんぱかった、これもお役人魂か

 事態の再発を防ぐには、いまだにあいまいな事実の徹底的な検証が不可欠だ。「上役の顔色をうかがい、へつらう」。「忖度」に新たな意味が加わったのは確かだが、もとより言うまでもない。森友、加計問題を、それで終わらせるわけにはいかない。