新型コロナウイルスの第5波が猛烈な勢いで全国に押し寄せ、新規感染者はついに1万人を超えた。

 五輪開催中の東京都では3日連続で過去最多を更新し、きのうは3865人に上った。隣接する首都圏3県や大阪府でも急拡大しており、緊急事態宣言が発令される方向だ。

 菅義偉首相は、東京への4度目の宣言発令に際し「再度感染拡大を起こすことは絶対に避けなければならない。先手先手で予防的措置を講ずる」と強調したが、果たせていない。

 宣言の効果は乏しく、ワクチン頼みでは限界があることを物語っている。医療崩壊を招かないよう、政府は早急に対策を練り直す必要がある。

 政府の感染症対策分科会の尾身茂会長はきのうの参院内閣委員会で「今の最大の危機は社会一般の中で危機感が共有されてないことだ」と警鐘を鳴らした。

 繰り返される宣言への慣れ、自粛疲れから政府の要請に協力しようという意識が希薄になっている。加えて、夏休みに入り、五輪競技の熱戦も相まって、警戒心が緩んでいるのが実情だろう。

 驚くのは、首相の危機意識の低さだ。五輪への影響を問われ、「人流は減少している。心配はない」と述べている。過去の宣言時に比べ、人出の減少幅は小さく、場所によっては増加していることを踏まえれば、楽観的すぎる。

 その一方で、五輪のテレビ観戦や不要不急の外出自粛を呼び掛けても、心に響かないのは明らかだ。

 ワクチンへの過信も気になる。首相は、7月中にワクチンを少なくとも1回接種した人が全人口の4割に達し、感染者は減少するとの見通しを示していた。これも甘い認識だ。

 英国で2回接種した人は全人口の5割を超えるが、感染力の強いインド由来のデルタ株による感染再拡大に見舞われた。東京でもデルタ株が猛威を振るい、ワクチンを打っていない若年層で重症化する割合が高まっている。この現実を直視すべきだ。

 徳島県も人ごとではない。7月の新規感染者はきのうまでで106人となり6月の25人を大幅に上回っている。28日時点でワクチンを2回接種した人は、65歳以上が75%に上る一方、全ての年代では27%にとどまる。デルタ株の感染が疑われる事例も出ており、油断できない。

 重要なのは、政府、自治体、国民が危機感を共有することだ。そのためには、政府は自治体とともに、厳しい現状を国民に説明し、感染予防の徹底を訴える強いメッセージを打ち出さなければならない。