イラン核合意の再建に向けた米国とイランとの間接協議が中断し、協議再開の見通しが立たない状況になっている。

 核合意を主導し、間接協議を進めてきたイランの穏健派ロウハニ大統領が8月上旬に退任、反米保守強硬派のライシ師に交代することになったからだ。

 ライシ次期政権は交渉を引き継ぐ方針だが、米国との立場の違いは大きく、バイデン米政権が譲歩を引き出すのは容易ではない。

 中断が長引けばイラン側が核開発を一段と加速し、軍事的挑発を強める恐れもある。仲介役の欧州連合(EU)や核合意当事国は、緊張を再燃させないためにも早期再開へ努力を続けてもらいたい。

 間接協議は核合意への復帰を掲げるバイデン大統領の意向も受け、4月に始まった。イランの核合意を逸脱する行為の停止と、米国の経済制裁の解除を討議。米国は、原油輸出とイラン銀行との国際取引を標的にした制裁を解除する考えを伝えたという。

 原油収入が国家財政を支えるイランにとっては大きな成果だ。ところが、最高指導者ハメネイ師や保守強硬派は全面解除にこだわり、交渉妥結のゴーサインを出さなかった。これにより、6月20日を最後に休会したままとなっている。

 妥結が近いとみられていただけに残念であり、失望を禁じ得ない。

 核合意は、トランプ前米政権の離脱によって深刻な機能不全に陥り、中東地域の不安定化要因の一つとなっている。

 国際原子力機関(IAEA)などによると、イランは既に濃縮度60%のウランを製造済みで、今月上旬には最大20%濃縮の金属ウランを製造する計画を通告してきた。核兵器の材料に使われる恐れがあり、米欧が批判を強めたのは当然だ。

 とはいえ、イランの核兵器取得を防ぐには間接協議を続けるしか手がないのが現状だ。EUや関係国はそうした認識を共有し、連携してイランの説得に当たらなければならない。

 気掛かりなのはライシ師や保守強硬派の出方だ。米欧に厳しい姿勢で対峙(たいじ)するとみられており、これまでの交渉で積み重ねてきた一致点を不十分と見なしている可能性があるという。

 ただ、バイデン政権にしても国内で批判を招くような安易な妥協はできない。イランが要求を大きくすれば、かえって多くの成果を失う事態も想定されよう。

 制裁によってイラン経済は低迷し、国民生活は苦境を強いられている。ライシ次期政権は、厳しさを増す国民の目も意識しながら、早急に米国との交渉に向き合う必要がある。