前回の衆院選、参院選では20代の投票率(抽出)はいずれも30%台。全体から20ポイント近く低い数字となっています。一方で、環境活動家グレタ・トゥンベリさんを生んだスウェーデンは若者の投票率が高く、80%台。両国の違いはなんなのか。次期衆院選に向けて、選挙の啓発活動を展開する徳島大の学生グループ「TYME(タイム)」が1日、「スウェーデンの学生と考える若者と政治のアレコレ」と題したオンライン討論会を開き、スウェーデンからの留学生と若者の政治参加について考えました。両国の違いのひとつとして浮かび上がったのは学校教育の在り方。スウェーデンではどんな教育をしているのでしょう。また、日本の学生は今の日本の教育をどう感じているのでしょう。

「投票に行かない」と公言できる日本にびっくり

 登壇したのはスウェーデンからの留学生グスタフ・マルムロスさん(24)。2019年から徳島大に留学し、現在は総合科学部3年に在籍しています。母国ではルンド大で日本語を専攻。アニメから日本に興味を持ったそうです。

スウェーデンから徳島大に留学中のマルムロスさん=徳島大

 日本に来てからマルムロスさんが気付いたことがあります。「日本人は政府や政治について話さないということ」。スウェーデンでは国政選挙での投票率は80%を超えています。「皆が気軽に政治について話す」と言います。

 マルムロスさんがスウェーデンにいたとき、日本人留学生と話す機会がありました。そこで、「投票に行かない」と言うのを聞き、びっくりしたと言います。「スウェーデンではそんなことを公言する人はいない。投票に行かない人もいるけれど、それは人には言わない。恥ずかしいことだから」。もし、そう言う人がいたら、周囲はどんな反応をするかと尋ねると、「そういう人を見たことがないから…」と考え込んでしまいました。簡単に想像できることではないみたいです。

 スウェーデンの教育については、次のように説明しました。「小学校では社会科の授業で、政府について、またジェンダーの概念やメディアの役割を学びます。中学校に入ると民主主義の概念や民主主義が抱えるジレンマについても学習。抗議をする権利がある、とも教えられます。スウェーデンでは教育や医療などのサービスが無料なので、福祉について学ぶ機会も増える。高校に入ると、政治について自分の意見を持っていることが期待されます」。

 中学校の社会科の教科書を見せてくれました。LGBTやジェンダー、#MeTooについても学ぶようです。現実の社会をかなり反映した内容に見えます。

 

リアルな政治問題を教育で扱うスウェーデン

 高校生になると、学校で教師を評価する仕組みがあり、評価項目に「先生は私に民主主義の概念をうまく教えてくれるか」というものが含まれると言います。教育は、民主主義社会を構成する個人を育てるためにある、ということが浸透しているようです。

 学校に政治家を招いて、討論会をすることもあります。ただ、特定の政党や政治家だけを招くことはできません。学校も、政治家が来るのを断ることもできるそうですが、特定の政党や政治家だけを断ることはできません。実際の選挙を題材にした模擬投票も行われます。

 「スウェーデンでは政治の話をしても重い雰囲気にはなりませんし、家族とも政治の話をします。日本との違いは、実際の政治の問題を教育で扱うかどうかにあるのでは」と話し、日本の学校でも政治家を招いて生徒と話す機会を設けたらいいと提案していました。

自分の影響力をどう評価するか

 2018年度に内閣府が日本と諸外国の若者を対象に実施した調査があります。

 「私個人の力では政府の決定に影響を与えられない」という問いに「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えたのがスウェーデンの41・1%に対し、日本は58・5%。「私の参加により、変えてほしい社会現象が少し変えられるかもしれない」という問いに「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えたのはスウェーデンの46・8%に対し、日本は32・5%。

 どうやら日本の若者は自分に影響力があると思っていないようです。スウェーデンの若者との違いはどこから生まれるのでしょう。要因のひとつは教育にあるのではないかという視点から、総合科学部の日本人学生と饗場(あいば)和彦教授(政治学)を交えた5人によるパネル討論が行われました。

日本人学生「民主制を学ぶが暗記するだけ」「模擬選挙はままごとのよう」

 饗場教授が問いました。「どうして日本の若い世代は、政治への関心が低いのでしょう」。日本人学生の1人は「社会を変えられないと思っている人が多い。どうせ選挙にいっても意見が反映されることはないだろうと諦めているのではないでしょうか」と答えました。そのほか、日本人の学生からは「スウェーデンでは民主主義がなぜ重要かを教えている。日本でも選挙について学ぶが、国民主権や民主主義を言葉だけ暗記して、テスト用に覚えている」「北欧の学校では選挙時に、現実の候補者に対する模擬選挙を実施しているが、自分が高校のときにした模擬選挙はおままごとのようだった」といった問題提起がされました。

饗場教授(右端)らを交えたパネル討論

 1人の日本人学生からは、子どもに対する認識が両国で違うのではないかという指摘が出ました。「子どもは知識や経験も少ないけれど、北欧では大人と同じように扱われる存在なのでは。一方で、日本では未熟だから守らなければという認識が強いかなと感じます」とした上で、高校時代に教師からこんなことを言われたと教えてくれました。「あなたたちは高校生ではあるが、まだ大人に守られている存在だ。社会に出ると、いきなり手を離される状況になり、いろんな知識が入ってきて、影響を受ける。そもそもの知識がなければどうしていいか分からなくなる」。

 守られ、受け身の状態のまま、社会に放り出されているのが日本の若者なのではないか、という指摘です。

子どもを権利主体と見る北欧 保護の対象と見る日本

 両国の小学校教科書を比較し、結果を発表した学生もいました。彼らの調査からは、この子どもという存在に対する認識の違いが表れているようでした。例えば、ルールについて、スウェーデンでは「他人の行動を予測でき、安心感を与えるもの」と意義を伝え、しかし「ファッションなどで規範を打ち破ることを繰り返していると、それでいいと思われるようになるかもしれない」などと、「絶対的なものではなく、変わるもの」と教えます。一方で、日本では「守ることが大切」と強調し、その意義については重要視されていません。SNSなどのメディアについては、スウェーデンでは「自らの意見を発信できる手段」としての側面を強調して教えていますが、日本は情報を受け取る手段である点を強調し、危険性についての記述も多いとします。

 饗場教授は「スウェーデンなど北欧では子どもが権利主体として認められ、それを高めるための教育がされています。選挙にも行くし、デモにも行く。自ら発信していく。そういう人がスウェーデンをつくるという状況なのでしょう。日本には民主主義の制度があるけれど、なかなか機能していないという現状がある。北欧を見習う点は少なくないのかなと思います」と話していました。

 主催団体の「TYME」の正式名称は「Tokushima Youth Meeting for Elections(徳島・ユース・ミーティング・フォー・エレクションズ)」で、「選挙のための若者会議」という意味です。16年度から本格的に活動しています。国政選挙や県内の首長選挙に合わせ、学生との討論会や勉強会を開いてきました。現在メンバーは約10人。新型コロナウィルス感染第5波の到来により休止中ですが、今年に入ってからは月1回、県内の地方議員との意見交換会を開いてきました。共同代表を務める総合科学部4年堀井麗以さん(22)は「今回の衆院選でも、候補者に来てもらって学生らと話す機会を設けたい」と意欲を見せていました。

TYME共同代表の堀井さん

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