「映画をみよう会」の30年間を振り返る篠原さん=阿南市中林町吉ケ内の自宅

 阿南市民らに映画を楽しむ機会を提供してきた「あなんで映画をみよう会」が、創立30周年を迎える。8日に記念事業として、昨年のベネチア国際映画祭で監督賞を受賞した「スパイの妻」(黒沢清監督)を市文化会館夢ホールで上映する。

 同会は、初代会長で現顧問の篠原和男さん(88)=同市中林町吉ケ内=が創設した。1991年8月に黒沢明監督の「八月の狂詩曲」を上映したのを皮切りに、これまでに110作品以上を市内外の映画ファンに届けてきた。現在、割安料金で鑑賞できる会員は約120人。

 上映会を前に、7月22日に阿南市富岡町のひまわり会館で、会員を対象にした勉強会を開いた。10人が参加し、篠原さんが映画の歴史や「スパイの妻」について講義した。篠原さんは「現代の日本映画を代表する作品を上映できるのは素晴らしいこと。30周年記念にふさわしい鑑賞会になる」と話した。

 上映は午前10時半からと午後2時からの2回。旧日本軍「731部隊」に関するパネル展示もある。前売り千円(当日300円増)。問い合わせは同会事務局、電話090(2788)5465。

初代会長の篠原さん「感動を共有したい」

 1991年の発足当初から約20年間、会長を務めた篠原和男さん。現在は顧問として運営委員に助言を送る。創立30周年を迎え「うれしいことも大変なこともあった。会員や支援者のおかげでここまでできた」と振り返る。

 特に印象に残っているのは、2009年4月に「おくりびと」(滝田洋二郎監督)を上映した時のこと。チケット発売後に米アカデミー賞外国語映画賞の受賞が報じられると問い合わせが殺到し、たちまち完売した。追加上映もあり、100回以上の例会で最多となる1667人の動員を記録した。「来場をお断りした人もいて心苦しかったが、うれしい悲鳴だった」

 入場者数が振るわない例会もあった。地元企業や団体に足を運び、来場を呼び掛けたことも少なくない。

 現代はエンターテインメントが多様化し、テレビやスマートフォンで手軽に動画を見られるようになった。それでも「映画は大画面で見るのを前提に細部まで作り込んでいる。音響や色彩を含め、作品の意図を正確に再現するにはシアター形式が不可欠」と思い入れを語る。

 映画を大きなスクリーンで一緒に見るのは「感動体験の共有」という。「映画文化が続く限り、会の存在意義はある。これからも市民の皆さんに魅力的な作品に触れる機会を提供したい」。節目を越え、新たな歴史を紡ぐ。