新型コロナウイルスワクチンの接種歴を公的に証明する「ワクチンパスポート」の申請受け付けが、全国の市区町村で始まった。

 渡航先の入国審査で提示すれば、隔離やPCR検査の免除といった優遇措置が受けられる。激減した海外との往来を円滑にし、景気回復の足がかりにする狙いがある。

 現在使用できるのは12カ国・地域で、渡航先として需要の大きい米中両国は対象外だ。日本への帰国時は、2週間の隔離が義務付けられることに変わりはない。コロナの感染状況を見ながら、利便性を高めていく必要がある。

 政府は今のところ、海外渡航に使途を限っているが、経済界は国内にも広げ、イベントの入場制限の緩和や飲食店の割引に活用するよう求めている。既に、「接種済証」の原本などを提示すれば、代金を割り引く特典を設ける企業も出てきている。

 苦境に立つ飲食店やホテル業界が、接種の終わった人の消費を喚起し、経営を立て直そうとするのは当然だろう。

 問題は、接種していない人を差別したり、接種を強要する同調圧力が強まったりする恐れがあることだ。「接種するのが当然」との風潮が広がれば、未接種の人が店舗や施設の利用を拒否されるようなことも起きかねない。

 経済活性化の手だてとするのであれば、人権への配慮が欠かせない。接種しない人が不利益を被らないための活用指針を設けるよう求めたい。