米朝首脳会談は曲折の末、予定通り12日にシンガポールで開催される。

 トランプ米大統領が会談中止を一方的に表明した後、北朝鮮は金正恩朝鮮労働党委員長の親書を手渡すなど会談の必要性を訴えていた。

 首脳会談が中止になれば非核化への道が閉ざされる事態も想定されただけに、会談の実現を歓迎したい。

 最大の焦点である北朝鮮の非核化について、トランプ氏は「1回の首脳会談で実現するとは言っていない」と述べ、「プロセスの始まり」と位置付けた。

 これまで短期間での非核化実現を迫ってきた交渉が、想定より長期間かかることを認める事実上の方針転換だ。

 迅速な「完全かつ検証可能、不可逆的な非核化(CVID)」を求める米国と、「段階的な非核化」を訴える北朝鮮の溝が埋まっていないことの証左だろう。

 トランプ氏は性急な核放棄を拒む北朝鮮に一定の配慮を示しながらも、非核化が実現されるまで制裁解除には容易に応じない方針だ。

 しかし、北朝鮮としては非核化作業が長期間にわたる場合、非核化が完了するまで見返りを得られない事態は受け入れ難い。制裁の一部解除や朝鮮戦争の終戦宣言など、米側の対応を確認しながら非核化を進める意向とされる。

 史上初となる米朝首脳会談まで1週間を切る中、具体的な非核化プロセスを巡ってどこまで折り合えるか。

 非核化の交渉が長引くほど北朝鮮を利することになる。かといって安易な妥協は禍根を残しかねない。トランプ氏の外交手腕が問われよう。

 それにしても、トランプ氏の最近の言動はぶれが目に付く。日本にとっては気掛かりなところだ。

 これまでしきりに口にしていた「最大限の圧力」という言葉を使わないと言う。さまざまな圧力を通じて拉致問題などの解決を図ろうとしている日本としては、違和感を覚える発言だ。

 拉致問題にしても、解決に向け首脳会談で働き掛けると約束しているものの、金氏の親書を携えてきた金英哲党副委員長との会談では、人権問題を議論しなかった。首脳会談で取り上げるかどうかについても言葉を濁した。

 非核化受け入れ後の北朝鮮への経済支援に関しては、隣国の日本や韓国、中国が支援するだろうと述べ「米国が支出する必要はない」との認識を示した。

 一方で、朝鮮戦争が終結すれば北朝鮮の安全を保証すると強調。終戦宣言を自身の成果にしたい考えだという。

 日米の連携に、ほころびが生じている。対話を優先している韓国との足並みの乱れも目立ってきた。憂慮すべき事態だ。

 安倍晋三首相はトランプ氏と7日に会談する。改めて日本の立場や要求を意を尽くして説明するとともに、緊密な連携を確認する必要がある。