ダイナミックなアクションやミステリアスな雰囲気で人気の「忍者」。最近は訪日客からも注目を集め、全国各地の娯楽施設で開かれる忍者ショーやテーマパーク、博物館といった「忍者スポット」は盛況だという。
そんな忍者スポットの一つ、山梨県の南東部、富士山の北嶺に位置する忍野村にある忍者テーマパーク「忍野 しのびの里」。ここで「忍者」として活躍する小西主馬さん(28)は徳島県阿波市出身。古里を後に、エンターテインメントの世界に飛び込み4年。忍者以外に映像分野にも活動の場を広げている。
「忍野 しのびの里」で活動を始めたのは2017年。アクション俳優兼監督の坂口拓さんがプロデュースする忍者パフォーマンス集団「靁風刄(らいふうじん)」の一員として忍者ショーに出演している。
ショーでは、2階ほどの高さから飛び降りたり、激しい戦いのシーンを演じたり。本物の刀や手裏剣を使った演技もある。ステージから手を伸ばせば観客席に届くほど近い迫力満点のステージ。ショーが終わると抱きついてくる子どももいる。小西さんは「お客さんから『楽しかった』という言葉をもらうと元気にもなるし、励みになる」と、やりがいを口にする。
幼い頃からジャッキー・チェンらアクション俳優や特撮ヒーローの仮面ライダーに憧れた。きっかけとなったのは香川大学3年の時。法学部で学び、一般企業や公務員も視野に就職活動も始めていたころ、大学入学後に始めた少林寺拳法で全国優勝を果たした。これが自信となり「やりたいことをやらずに終わると後悔する」と、在学中にエンタメの世界へ飛び込んだ。
大阪の芸能事務所に通ってアクションを学んだ。その傍ら、京都・太秦や和歌山のポルトヨーロッパでヒーローショーや忍者ショーに出演した。その後、東京へ移り、栃木県の日光江戸村でも活動した。
忍者として舞台に立つだけでなく、映像の世界にも活動の場を広げている。ドラマや映画のアクション場面に俳優に変わってスタントマンとして出演。最近ではNHKのBSプレミアムで6月3日から放映されている、大竹しのぶさん、室井滋さん主演の「アイアングランマ2」に出演している。アイドルグループHKT48のメンバー豊永阿妃さんのアルバムの特典映像に「忍者」として出たこともある。出演俳優へのアクション指導も行っているほか、交通安全を啓発する「交通スタント」としても活動している。
今後の目標は3つ。1つ目は、忍者として「しのびの里」の魅力を発信すること。2つ目は、関わる機会が増えている映像の世界での活躍。将来は「アクション作品の監督をやってみたい」という。
3つ目は、アクションチーム「超級動作班」のメンバーで作ったオリジナルヒーロー「超級忍者ドラクナイザー」を世に広めること。忍野八海、富士五湖の美しい水を護る忍者ヒーローで、小西さんがドラクナイザーに変身する。各種施設や自治体などからの公認、テレビ作品への採用を目指し「アピールしていきたい」と意気込む。
今春からは芸能プロダクションにも所属し、活躍の場がさらに広がりそうだ。そんな小西さんの迫真の舞台が見られるのは主にしのびの里。「徳島から少し遠いけれど、ぜひ足を運んでほしい」と話している。
弟は現役Jリーガー
小西さんの弟は、J2徳島ヴォルティスで活躍する雄大選手(20)。5月12日の京都戦で決めたプロ初ゴールは、スポーツ動画配信サービス「DAZN」の週間ベストゴールにも選ばれた鮮やかなシュートだった。
小西さんがサッカーを始めたのは、雄大選手が生まれた頃。阿波高校時代には、雄大選手が所属する地元のチームを指導するため、サッカー部を2年で退部した。雄大選手がガンバ大阪ジュニアユースに進んでからも、一緒に生活した時期があり、さまざまな場面で弟を支えてきた。
雄大選手のプロ初ゴールは、ジャンピングボレーで捉えたアクロバティックなシュート。弟の活躍を喜びながら「僕の方がああいうのはやっていたかな」と笑う。
サッカーの世界で活躍する弟に刺激を受け「自分も徳島で何かしたいという気持ちが強くなった」と話す。近く、徳島県内で開かれる交通安全教室にスタントとして登場する予定だ。
大きな夢も描いている。2020年の東京五輪に兄弟で出場すること。雄大さんはサッカーの日本代表として、小西さんは日本文化の忍者として。「弟に負けないように頑張りたい」。大舞台に立つために実力を磨き続ける。