なかむらあゆみさん

なかむらあゆみさん

宮月中さん

宮月中さん

茜あゆむさん

茜あゆむさん

 徳島をテーマにした全国公募の掌編小説コンクール「第4回徳島新聞阿波しらさぎ文学賞」(徳島文学協会、徳島新聞社主催)で、大賞の阿波しらさぎ文学賞は、なかむらあゆみさん(48)=本名中村あゆみ、徳島市山城西3、主婦=の「空気」に決まった。なかむらさんは前回の徳島新聞賞に続く受賞。徳島県人として初の大賞受賞で、女性としても初の阿波しらさぎ文学賞となった。

 応募作品は、43都道府県とスペイン在住の日本人から計516点あり、最終選考に残った19点から入賞3点が選ばれた。

 県内在住者と徳島出身者を対象にした徳島新聞賞は宮月中(みやつきちゅう)さん(27)=本名星野凜、徳島市南前川町5、大学院生=の「にぎやかな村」が受賞。25歳以下を対象にした徳島文学協会賞は茜あゆむさん(24)=本名大平(おおだいら)歩、静岡県伊東市、フリーター=の「移動する祝祭日」が選ばれた。

 阿波しらさぎ文学賞に輝いた「空気」のテーマは、コロナ禍における肉親との死別だ。コロナの流行で空気感染におびえたり、マスク着用や外出自粛などで感じたりする同調圧力のような空気。そんな現実社会にヒントを得て、本来、目に見えないはずのさまざまな空気が随所に浮かび上がる物語になっている。

 なかむらさんは朗報を耳にして「すごく動転した。喜びはあったが怖さもあり、主催者からの連絡を遮ってしまったほど。大変光栄だが、正直に言うと作品がどう読まれるかドキドキしている」と話している。

 最終選考委員を務めた芥川賞作家吉村萬壱さんと小山田浩子さんは「タイトルが秀逸。空気を読まない母、新型コロナの時代の空気、感染、父の存在の希薄さなどがタイトルに凝縮されていて、切れ味がある。文章がうまくて語句も吟味され、話の運びも自然だ」と高く評価した。

 最終選考は、吉村さんと小山田さん、徳島文学協会の佐々木義登会長(四国大教授)、徳島新聞社の岡本光雄理事が務めた。コロナ禍のためビデオ会議システムを使って開かれた。

 阿波しらさぎ文学賞には賞金30万円が贈られる。徳島新聞賞は10万円、徳島文学協会賞は3万円。「空気」と最終選考委員4人の審査評は27日付、「にぎやかな村」は28日付、「移動する祝祭日」は29日付の徳島新聞と徳島新聞電子版でそれぞれ紹介する。