力投を続けた板野のエース森井。決勝では球に切れがなく、10安打6失点と打たれた=鳴門オロナミンC球場

力投を続けた板野のエース森井。決勝では球に切れがなく、10安打6失点と打たれた=鳴門オロナミンC球場

 アクシデントが板野のエース森井の投球を狂わせた。絶対の信頼を置く捕手の前田が一回の守りで、鳴門渦潮の二塁走者笹田と交錯して救護室へ。「帰ってきてくれ」との願いはかなわず、「みんなを甲子園へ連れて行く」という目標も実現できなかった。

 立ち上がりから制球が定まらなかった。一回、2四球と右前打で2死満塁とされ、中前打で先制された。2人目のランナーが本走した際、前田とぶつかった。
 代わって久しぶりにマスクをかぶることになった金森の表情は硬いように森井には思えた。「俺が抑える。捕ってくれるだけでいい」と、笑顔で語り掛け、緊張をほぐした。

 しかし、1人でマウンドに立ち、準決勝までの4試合で458球を投げ抜いた疲れと前田が欠けた動揺から、金森が求めるコースには投球できなかった。
 捕手が捕りにくい低めや内角は投げづらい。一回に2点を失い、二回も2失点。徐々に点差を離された。

 春に投手を任された直後、味方のミスにいら立ってしまい、勝てなかった。どうすれば甲子園に行けるか。和田監督と何度も話し合った。チームの仲間を引き立て、思いやることの大切さを知り、大会中は、マウンドで笑顔を絶やさず、ミスした仲間には必ず声を掛けて励まし続けた。

 「甲子園でみんながプレーする姿を見たい」。最速150キロを誇る右腕は成長の原動力となった思いを胸にしまい、すがすがしい笑顔で球場を後にした。