戦争で亡くなった人たちの遺影や遺品を展示する県戦没者記念館=徳島市雑賀町

 日中戦争を含む先の大戦では、徳島県関係者2万8000人以上が戦没死した。県内各地での空襲犠牲者は1300人以上に達する。

 県遺族会が運営する「県戦没者記念館―あしたへ」(徳島市雑賀町)は、こうした戦争の史実を風化させず、県民一人ひとりが「戦争と平和」について考えるための施設だ。2014年10月に県護国神社の境内にオープンし、沖縄への修学旅行に備えた平和学習などで来館する中学生らも多い。

 館内の壁一面のパネルを、遺族から提供された戦没者約8100人の遺影が埋める。沖縄、中国、フィリピン、ニューギニア、ミャンマー(ビルマ)…。そこに記された戦没地を見れば、徳島からはるか遠い異郷の地に、尊い命を散らしたと分かる。家族を残して逝く無念。残された家族の悲しみ。そして、もし戦死していなければどんな人生を送ったかと思うと、見る者の言葉を奪う。

 展示ケースには、兵士が身に着けていた鉄兜(かぶと)や帽子、軍隊手帳、水筒といった遺品が並ぶ。戦地から家族に送られた手紙やはがき、死亡通知書もあり、これ以上ない「戦争の証言者」となっている。

 全24枚のパネル展示は、近代日本の「戦争の歴史」と戦後日本の「平和の歩み」を対比して学べるようになっている。特に県関係の展示は充実しており、蔵本地区に兵舎・練兵場が置かれた「徳島の郷土連隊・陸軍歩兵第43連隊と第143連隊」、1000人以上が犠牲になった「徳島大空襲」、那賀川鉄橋爆撃や小勝島基地を取り上げた「徳島県内に遺(のこ)る戦跡を訪ねて」など、見応えがある。

 図書コーナーは昭和史や戦史、戦争体験者の手記などの書籍約1200冊と、DVD70点を収蔵している。

 開館以来、これまでに「沖縄戦展」「ヒロシマ原爆展」「シベリア強制抑留」「戦没者遺骨収集」などのテーマで計11回の企画展を開催。現在はコロナ禍で延期されているが、毎月第2土曜に語り部事業も行ってきた。

 全ての県民に、一度は足を運んでほしい平和ミュージアムである。

〈2021・8・17〉