安定的な皇位継承策を探る政府の有識者会議(座長・清家篤元慶応義塾長)は、男系男子世襲の伝統を尊重するとの結論で議論を終えようとしている。危機感に乏しく、問題を先送りしたにすぎない。

 現行の皇室典範では、天皇陛下や秋篠宮さまの後を継ぐ皇位継承資格者は悠仁さま(14)しかいない。皇室が世代を超えて確実に継続していくには、どんな方策があるのか。本題はそこにあった。

 しかし、有識者会議は悠仁さま以降の皇位継承について「将来、悠仁さまの年齢や結婚を巡る状況を踏まえた上で判断すべき事柄ではないか」と結論付けた。近く政府に答申し、衆院選後に国会に報告される段取りという。

 悠仁さまが結婚し男子が生まれれば、皇統の危機は杞憂(きゆう)に終わる。そうならない事態に直面した時、改めて議論すればいい、との考えだ。楽観が過ぎるのではないか。

 それで事が済むなら、上皇さまが退位のビデオメッセージで安定的な皇位継続を訴えたり、国会が退位特例法の付帯決議で「速やかな検討」を政府に求めたりする必要もなかった。

 男子が生まれない場合、どんな選択肢があるのか。危機に直面してから議論を始めるのでは遅い。準備を進めるべきだというのが議論の出発点だった。

 女性・女系天皇や女性宮家の創設も、選択肢を広げる案の一つである。天皇家の長女、愛子さま(19)の即位を望むか、望まないか、といった人気投票の類いではない。

 有識者会議のメンバーや男系男子にこだわる「保守派」と言われる人々には、重要な視点が欠けている。

 未来の皇位継承者を生むのは、一般社会を生きている女性である。保守派の思惑通り、男子誕生となるには、交際を経た婚姻の決心が大前提となる。果たして、皇室入りを望む女性がどれほどいるだろう。

 皇統維持の「使命」を背負い、好奇と期待の目に囲まれる立場がいかに厳しいか。適応障害の症状に陥った皇后さまの苦悩を思い返してみればいい。

 眞子さまの結婚を巡る小室圭さんと親族への容赦ない攻撃も、皇室入りに影を落とす。「婚姻には血税が使われる」の一点を根拠に、あれほどのプライバシー侵害や名誉毀損(きそん)が許されていいものか。

 女性が安心して皇室入りするためにも、皇位継承の選択肢を広げる必要がある。男系男子が優先だとしても、女性の即位も可能とする方策を模索すべきだ。保守派が主張する旧宮家男子の皇籍復帰も、選択肢として検討すればいい。