2020年の小中高生の自殺者数が、統計のある1980年以降で最多の499人に上った。特に夏休み明けは、子どもの自殺が増えるといわれている。新型コロナウイルス禍で思うように動けず、不完全燃焼の子どもや保護者らも少なくないだろう。自身も不登校を経験し、現在は引きこもり支援を行っている徳島県三好市池田町の天野雄二さん(44)=NPO法人みよしサポート協会ぴあぞら理事長=にコロナ下の支援の現状やアドバイスなどを聞いた。
 

引きこもり支援について話す天野理事長=三好市池田町の「よらんdeやまき」

 ぴあぞらは2012年に発足。就労体験できる施設「よらんdeやまき」や、当事者らが利用できるフリースペース「すりーぴぃ」やなどを開設し、当事者や家族の居場所作りや訪問支援などを行っている。

コロナ下での支援は

 通常は「よらんdeやまき」で毎週金曜日の午前10時から午後5時まで活動しているが、今はコロナ下のため、昼食を一緒に食べずに午前11時から午後5時までに時間も短縮している。引きこもりの人は、人との出会いが訓練になる。コロナの影響でそれが大幅に減った。普段1人でご飯を食べている子はコミュニケーションの場が少ない。一緒に料理を作って食べるというのは利用者の生活の基本になっていた。うちの活動の柱の一つができていない状態で痛手だ。

 現在は10代後半から50代までの22人を支援している。支援自体は変わっていないが、コロナ禍で利用者が急に増えたようにも感じる。病院や地域の保健師、関係機関からつながるケースが多い。県内ではコロナの影響で仕事のペースが乱れ、これまで頑張ってきた子が燃え尽きて仕事を辞めてしまった。コロナが怖くて外出の機会がなくなったという子もいる。
 都会では父親や母親が自宅にいて、子どもとの距離が近くなり過ぎて関係が悪化するという報告も出ている。「雇い止めに遭い、引きこもるようになった」「家族会など支援団体の集まりが開けなくなった」「ただでさえ仕事がないのにますます仕事がなくなった」「親も頼るところがなくなった」といった声も聞いている。逆に一部の人からは「コロナ禍で人出が減っているので、少し外出しやすくなった」という声もあるようだ。
 

ネット依存への懸念も

 コロナ下では、ますますネットゲームに依存してしまうのではないか。外に出ない生活になり、体力やコミュニケーション能力が落ちる。それに慣れてしまったら外に出る気持ちがなくなってしまう。休み癖がついて支援がさらに長くなってしまい、回復するのにさらに時間が掛かることが考えられる。急な休校などで生活リズムが崩れると、夜中までSNSや動画を見たりして、ネット依存が増えるかも知れない。遊びに行くところがないので、ズームで児童生徒の状況を確認するなど、通常より気を付けた方がいい。
 

利用者の話す天野理事長(左から2番目)ら=三好市池田町の「よらんdeやまき」
 

中学時代から続いたいじめ 計8年引きこもり

 僕は高校2年の時に引きこもりになった。中学2年からいじめられていて、結構ひどいいじめに遭っていた。高校の時、校舎の3階の窓ガラスから落とされそうになった。腕を突っ張って耐えていたが、「もういいや」と思ってぱっと手を離した時に、いじめっ子が僕の腕をつかんで助けられた。それがすごく屈辱的で、「もう学校行けんわ」と思った。それが高校2年の4月の終わりで、ゴールデンウィーク明けから行かなくなった。学校の先生はいじめっ子と僕が友達だと思っていた。友達を連れて行けば学校に来てくれるだろうという考えで、いじめっ子を家に来させて、親も友達に来てほしいから「入れ、入れ」と。うちの家がたまり場になってしまった。その関係を断ち切るために、また引きこもりになって、余計に悪くなったこともあった。昔でいう大学入学資格検定(大検)の資格を取るために県外の予備校に通って1年勉強したが、また引きこもり、家で暴れて窓ガラスを割ったこともあった。

 学校に行かなくて正解だったかもしれない。自殺していたかも知れないと思う。あのまま行っていたら、トラウマ(心的外傷)を抱えているだけだった。我慢して行くのはつらい。中学は卒業しないと行けないので、行かないと仕方ない。心を殺して行っていた。でもそういう気持ちは燃え尽きてしまう。だから、限界が来た。
 

もし同じように頑張っている子がいたら

 「よう頑張ってるね」と言いたい。周りが気づいてあげないと、苦しんでいる子は何も言えない。気づいてあげた時は、根掘り葉掘り理由は尋ねない方がいい。恥ずかしいと思っているので理由は言えない。根掘り葉掘り聞かれると、責められていると感じる。親や先生が、本人は大変な状況にあるとことを理解してあげた方がいい。
 「学校に行きたくない。死にたい」と訴えてきた場合に、否定してはいけない。学校に行きたくないということはよほどなので。「甘えるな、学校に行け」と言われるかも知れないけど、ひょっとしたら最悪死ぬかも知れない状況だということは理解してあげてほしい。周りが気づいてあげてほしい。本人も親も、すごく視野が狭くなっている。社会人になったら分かるが、学校の価値観はほんの一部。それが分かってもらえたら。

 僕が引きこもっていた時は、周囲は僕の言うことより先生や友人の言うことを信じて、僕がサボっている、怠けていると思われていた。実際に学校に行っていないのは僕なので、周りから見たら僕が悪いと捉えられた。でも、学校に行っていないのにはそれなりの理由がある。自分の子どもを信じてあげてほしい。
 

本人はどうしたらいい?

 「もう休んでください」ということですかね。いじめホットラインとかいろいろあるので、相談先も教えてあげる。実名を言わなくても相談に乗ってくれる所もあるので、相談してほしい。一旦ストレスから離れるために休むことも必要。でも、離れすぎると引きこもりになる。そこが、定期的に支援者が関わらないといけない理由。中学生だと適応指導教室に通うのも手だ。高校生だと通信制もあるし、公認試験もあるし、夜間学校もある。選択肢がいろいろあるということを知ってほしい。

 学校を卒業した子には気を配れなくなる。大人と同じ扱いになるし、街に出て親の目も届かないようになったら、街で傷ついて地元に帰ってきて引きこもるということもある。気を付けられなくなることが危ない。これまで普通に生活していたのに、突然引きこもるタイプの子もいるので気を付けるのが難しい。もし不安を抱えている人がいたら、僕だったら「休んだら」と言う。もしかしたら精神疾患などの可能性もあるので、周りは怠けていると決めつけずに、通院や相談を勧めた方がいい。
 

保護者のケアも必要

 本人だけでなく、親も1人で抱え込まないようにしてほしい。家族会に参加するのもいい。抱え込んだら、冒頭に言ったコロナ禍の家庭のようになってしまう。親は学校に行ってほしくて「行け、行け」と言う。「学校に行かないやつは甘え」とか「言って当たり前」とか決め込んでしまう親もいる。その時、子どもは結構きついので、親以外に子どもに関われる人がもうちょっと増えたらいい。
 親も不安に思っている。本来は親を支える人が必要だが、その機能がほとんどない。家庭の中のことは外に出さない親が多い。不登校や引きこもりの親は、周囲から結構責められている。「あんたがしっかりせんけんじゃ」と責められると、誰にも相談できず、親は子どもに矛先を向けてしまう。「学校に行かしてあげたいけど行けないんだ」と理解してくれる周りが必要だ。
 

引きこもりへの理解を求める天野理事長(右)ら=三好市池田町の「よらんdeやまき」

引きこもりや不登校以外に目を向けて

 一人一人の状況によって、ゴールは違う。もし、死にたいとまで思っているのなら、鬱(うつ)の可能性もある。その場合は今勉強することが正解かどうか分からない。自立するのが正解な人もいれば、とにかく生きててくれればいいという状況の人もいる。親の負担を減らすのが正解な場合もあるが、自分で物事を決められる力があったらいいと思う。親とか世間の評価に縛られてきた人も多いので、自分のやりたいことを見つけたりできればいい。「東京に行って漫画家になりたい」というのなら、一度やらせてあげればいい。否定せずに話を聞いてあげるだけでも、力が出てくる。不登校や引きこもりの当事者も親も大変だということは理解してほしい。「こうしてあげたらいいのに」と意見を言うのは、親には酷なこと。自殺とか引きこもりという言葉に引っ張られすぎるところもある。不登校だから優しくしてあげた方がいい、というわけではない。不登校や引きこもりという点だけに注目せず、他のところに目を向け、普通に接してあげてほしい。

 小中で18万人。子どもの数は減るのに、不登校の数は増えている。学校に行かなくてもいいという考えが浸透してきた結果でもあるが、まだ頑張って学校に行っている子もいっぱいいると思う。引きこもりや不登校は全然珍しいことじゃない。誰でもなってしまうこと。鬱などは能の器質の問題なので、本人が弱いとかそういうことではない。そういう事実をちゃんと伝えられれば。本人のせいじゃないこともあるので、知っておいてほしい。