新郎新婦を乗せるオープンカーが出発する直前のこと、どんよりした梅雨空が明るくなった。「雨が上がった」。皇居のあちこちから、弾んだ声が漏れる。お二人の門出を祝福するようだった。あれから25年になる
沿道に手を振る雅子さまの笑顔を支えていたのはあのプロポーズの言葉だったろう。「僕が一生、全力でお守りします」。これに勝る求婚の言葉を聞いたことがない
それにしても、「殿下は一体、何から妃殿下をお守りするのだろう」。当時、宮内庁職員の間で話題になった。いやいや、深い意味はなくおっしゃったんだろう、そんな結論に落ち着いた
「雅子のキャリアや、それに基づく人格を否定する動きがあった」。11年がたち、皇太子さまの「人格否定発言」が、皇室を揺るがした。傷つき、苦悩する妻を「全力で守る」言動であったのは間違いない。一度発した約束の言葉に時効はない
長らく天皇陛下のプロポーズの言葉とされてきた「柳行李(やなぎごうり)一つで来てください」は、「誤報」によるうそだ。結婚から40年以上たった2001年、陛下自ら「このようなことは一言も口にしませんでした」と打ち消した
天皇の言葉は重い。来春には「日本国の象徴」となる皇太子さま。「全身全霊」で務めを果たした陛下に代わり、どんな言葉を、われわれに投げかけるのだろう。