高校卒業後、京都製菓製パン技術専門学校へ進み、神戸や徳島の洋菓子店で約5年経験を積んだオーナーパティシエの金繁美菜子さん(38・阿南市出身)。26歳のときに上京し、銀座のカフェでパティシエとして2年半勤務。その後は、六本木にある輸入車のディーラーに併設するレストランで働いた。約8年間の修業を通して、テイクアウト用のケーキや焼き菓子の製造と、カフェやレストランでプレートを彩るデザートの創作に携わり、技術と表現の幅を広げた。

 徳島に戻り、これまでの経験を生かしてすぐにでも独立したかったが、資金的にもいきなり店を構えることはハードルが高かった。そこで、多種類のパンと焼菓子を軽自動車に載せ、企業や学校、病院などをまわる移動販売店を始めた。「パンがメインで、マドレーヌやクッキー、プレーンシフォンを載せていたんですが、そのうちシフォンにリピーターがつくようになったんです」。

オーナーパティシエの金繁さん。手にしているのは、一番人気のプレーンシフォン(300円)。手のひらサイズ(直径12cm)で、ちょっとした贈り物にも。

 シフォンケーキは、金繁さんが神戸の修業先で何度も焼いたフランボワーズのシフォンケーキがルーツ。フレーバーを除き、卵のシンプルな味わいを楽しめるように、微調整を繰り返してレシピを完成させた。

 移動販売で知り合った人の紹介で、阿南市や小松島市のイベントやマルシェに出店するようになった。あるとき、小松島みなと交流センターkocoloにあった、起業を目指す人向けのチャレンジショップを使わせてもらえる機会を得た。「8カ月間ショップを経営してみて、せっかくのこの経験を無駄にしたくないって思って、実店舗を構えることにしたんです」。

 2018年9月、小松島市にHuitがオープン。当初は今まで通り、パンをメインにする考えだったが、夫の琢(たく)さん(38・小松島市出身)が「シフォンケーキの専門店にしたら?」と提案。「移動販売やイベントで、シフォンに人気が集中していることを実感していたし、チャレンジショップでも好評だったので、専門店にすることに反対も不安もなかったです」と金繁さんは朗らかに話す。

 小麦粉、卵、オイル、砂糖だけで作られるプレーンシフォン。北海道産の小麦粉と、阿南市の「たむらのタマゴ」の卵を愛用する。「オリーブオイルとか、ひまわりオイルとか、天然のオイルを使って軽めの食感に仕上げます。生地のきめ細かさにこだわっているので、メレンゲの立て方がいちばん重要です。夏と冬でも違いますし、メレンゲの状態を見て感覚で調整しています」。

 フレーバーによっては水やオイルの量を変え、ココアや抹茶などパウダー系を加える場合は、生地が重くなりすぎないようにメレンゲの硬さでバランスを取る。今ではスダチ、アーモンド、きなこ、イチゴ…と種類豊富で、整腸作用のある「竹炭」や、卵白のみ使用した真っ白で、もっちり感の強い「エンジェル」といったユニークな商品もある。

BIGシフォン(1500円)。直径約20cm、カットシフォン8個分。

 現在、移動販売は妹に引き継がれ、「べーかりーはっちゃん」として独立。金繁さんは、店舗近くの工房で、店舗用と移動販売用のお菓子づくりに専念している。誕生日やパーティ用のデコレーションシフォン(ミドルシフォン2500円〜、BIGシフォン3000円〜/3日前に要予約)も手掛ける。

 「“お土産に買って帰ったシフォンケーキを皆が喜んでくれた”“シフォンケーキは苦手だったんやけど、ここのは美味しい”と言ってくれるお客さんの感想が励みになっています。ゆくゆくはカフェをするのが夢。スイーツだけでなくて、ランチも提供できればいいな…」とイメージを膨らませる。

シフォンケーキ専門店 パティシエルーム Huit(ユイット)
住所=小松島市江田町腰前189-5
0885-39-0748
営業時間=10:00〜19:00(売切まで)
定休日=水曜、木曜休(ほか臨時休あり)

駐車場:なし
キッズスペース:なし    
多機能トイレ:なし
開店:2018年    
Wi-Fi:なし