「豊かな想像力は他者への寛容さにつながる気がする」という宮月さん=徳島市南前川町

 2018、19年の徳島文学協会賞に続き、今回は徳島新聞賞を受賞した。「これまでより一つステップアップした賞を頂けてうれしい。自信につながる」と、にこやかに話す。

 受賞作「にぎやかな村」は、廃村マニアの「私」が主人公。徳島県西部の隧道(ずいどう)を抜けた所にある村に足を踏み入れた私は、不思議な祭りに出くわす。

 そこでは蕎麦(そば)の花が一面に咲き誇り、村に一軒しかない宿は宴会で盛り上がっていた。宿の部屋からは橋が見える。宿の主人によると、祭りの日には先祖が川の向こう岸から橋を渡ってやってきて、村人たちがにぎやかに暮らしている様子を見て、向こう岸へ帰って行くという。

 今は廃村となった村そのものが、幸せだった頃を夢想しているとの設定。「かつて全国津々浦々の村には人々の営みがあり、にぎわいが確かにあった。私たちは、主人公が暮らす現代の街をにぎやかで安心できる場所だと胸を張って言えるだろうか、と問題提起をした」と作品に込めた思いを語る。

 大学の授業で山奥の廃村を訪れた際、着想を得た。「廃虚を見て何を思うのか。僕はそこに住んでいた多くの村人の息遣いを想像してしまう」。消えていったものに対する慈しみの感情も表現した。

 松山市で生まれ、3歳から高校卒業まで山口県宇部市で育った。徳島大学に進学し、現在は大学院博士課程の3年目。自宅でも職場でもない第三の場所「サード・プレイス」を研究している。

 幼い頃から地図を見るのが好きで、あれこれと想像を巡らせていた。「宇部の地図を見ながら、この細い道は神社への参道で昔はメインストリートだったはずだとか、炭鉱の跡地が工場に生まれ変わったんだろうとか考える。現状が全てではないと分かり、興味深い」という。

 今は毎日、散歩に出掛ける。通学時に自転車で慌ただしく通り過ぎる街並みをゆっくり歩くと、普段は見過ごしていた新鮮な発見がある。

 そんなごくありふれた風景をインスタグラムにアップしている。「忙しい日常の中でも時には立ち止まり、物事をちゃんと見て、想像する心の余裕を大切にしたい。口幅ったい言い方かもしれないけれど、豊かな想像力は他者への寛容さにつながる気がする」

 新たな作品を書くときは以前よりレベルの高いものにしなくてはいけないと肩に力が入り、ハードルが高くなるという。とはいえ「次は大賞を狙う。さらに長編小説にも挑戦し、大きな賞を取ってみたい。僕が大きく羽ばたいて、阿波しらさぎ文学賞がより一層注目されれば、選考委員や徳島の皆さんへの恩返しになる」。創作意欲はますます盛んだ。