76年前に世界で初めて核攻撃を受けた広島では行政や学校だけでなく、積極的に平和活動に携わる住民やNPO法人などの存在が大きい。徳島にゆかりのある人たちも、争いのない未来への思いを紡いでいる。

母親の被爆体験を語り継ぐ沖西慶子さん=広島市内

 小中高校時代を徳島で過ごした沖西慶子さん(56)=広島市在住、ビオラ奏者=は広島、長崎両市の被爆者の体験を語り継いでいる。母素子さん(86)が10歳の時に長崎市で被爆。2008年に自身が甲状腺がんを患ったことをきっかけに被爆の実情を学ぶようになった。「被爆2世の自分が惨状を伝え、風化させないようにする」。16年に被爆者の体験を語り継ぐ広島市の「被爆体験伝承者」、17年には家族が語り継ぐ長崎市の「家族証言者」となり、全国の学校や催しで原爆によって失われた人々の日常を伝えている。

 講演中に気分が悪くなって退席する生徒がいる中、原爆や戦争について理解しづらかったり興味を持てなかったりするときは、無理に学ぶ必要はないという。自身も小学生の頃に見た長崎市の原爆資料館の写真や展示物が怖く、できるだけ原爆の話をしないようにしてきた。がん発症を機に平和のありがたさに気付き、「まずは戦争体験について祖父母や両親に聞いてほしい。知るだけでも継承につながる」と話す。
 

絵本「おりづの旅」を手に持つ山本さん=広島市内

 夫の転勤で4年ほど徳島市に住んでいた山本真左美さん(57)は、国際平和事業などを担うNPO法人「ANT―Hiroshima」の一員として活動している。平和記念公園(広島市)にある「原爆の子の像」のモデルとなった佐々木禎子さんと、その像を建てた子どもたちの物語をつづった絵本「おりづるの旅」を広めるプロジェクトを担当。これまで34言語に訳し、73カ国に4千冊以上を届けている。「字が読めない小さな子どもでも絵にひかれる。絵を見れば何が起きたかがすぐ分かり、言葉も短いので伝わりやすい」。
 広島市の事務所には、インターンの大学生や修学旅行生など若い人が多く訪れる。「平和の尊さについて友達や家族と話したり、会員制交流サイト(SNS)で広めたりして意識を高めてほしい」と山本さん。
 

子どもたち向けの平和学習を企画する横田さん=広島市内

 オンラインの平和学習やツアーなどを提供するNPO法人「Peace Culture Village」(広島県三次市)のメンバーで、旅行大手JTB社員の横田裕美さん(33)=藍住町出身=は、修学旅行や通年の授業で学ぶ平和学習などを企画している。児童生徒に原爆投下を自分事として捉えてもらうには、学習の目的や意義などを事前に学ぶ「マインドセット」が欠かせないという。
 横田さん自身、修学旅行で被爆地を訪れた。当時は「原爆は悲惨だけど、広島や長崎で起きたこと。徳島でいる自分にはあまり関係ないと思っていた」と振り返る。「平和について自分事だと感じてもらう機会をつくりたい。子どもに合わせたいろいろなアプローチができれば」。世界平和の実現に向け、斬新なアイデアを発信していく。