アイヌ民族の格差問題 【実践校】北海道北見北斗高校 

<報告者>野口幸司さん・徳島新聞NIEコーディネーター

生徒の見方・考え方形成

野口幸司さん

 3年現代社会での実践は、先住民族であるアイヌの人々を対象に札幌大学が奨学金制度を創設したという2009年の新聞記事を基に「なぜ、札幌大学はアイヌの特別入学枠を設定し、企業にアイヌの優先雇用枠を要請しているのだろう」と問いかけるものだった。

 使ったのは、新聞記事だけでなはい。経済格差の存在を示した記事やその根拠となったデータ、アイヌ民族から狩猟と漁業を取り上げ農民として定住することを強要した「北海道旧土人保護法」の条文、農耕のためにあてがわれた開墾困難な湖畔の傾斜地の写真などの資料を読み解きながら、経済的公正とは何なのかを考えさせている。

 本実践は、新聞を生徒の見方・考え方を形成するための手段だと位置づけている点が注目に値する。実践の目的はあくまでも、社会科の大目標「民主主義社会を形成する主権者の育成」にあるのである。このことは「民主主義社会を構成する市民を育成する」というNIEの本質的な目的にも合致している。

かつてアイヌの人々に与えられた、やせた土地の写真を示しながら、生徒に説明する北海道北見北斗高校の山崎辰也教諭(左端)=4月、北海道北見市(同高提供)

 授業の終末では、アイヌ文化の担い手育成を目的とした「ウレシパ奨学生」についての新聞記事を使って、奨学生のアイヌ文化伝承活動への思いを紹介している。経済面だけではない多面的な視点が提示されている点でも、参考になる実践である。

 

目標に向かって(希望と勇気・努力と強い意志) 【実践校】札幌市立栄南小学校

<報告者>岡田志麻さん・鳴門市第二中学校校長

発達に応じ効果的に活用

岡田志麻さん

 4年生の道徳で、夢に向かって努力することの大切さを学ぶ教科書教材に、それを支えてくれる周囲の人の存在を伝える新聞記事を補足教材として組み合わせた授業が展開された。

 足の手術やリハビリを乗り越え、パラリンピックに出場した谷真海選手の生き方を通して、児童たちは夢を諦めずに目標に向かって一生懸命に努力することの大切さを学んでいく。その中で、「パラリンピックでは素晴らしい記録も残したが、実はそれ以上に大切なものがある」という先生からの問いかけがあった。

 「記録より大切なものとは?」

 そこで、1人1台のタブレットに「病から 再起 信じてくれた」と見出しの付いた新聞記事が紹介された。記事を見た瞬間、児童から「やっぱりお母さんだ」という声が上がる。

 病気の時や困った時、家族の支えがあるから頑張れるのは私たちと同じだという気持ちになり、児童たちは一気に自分ごととして捉えることができるようになった。努力は、自分の頑張りだけでなく、さまざまな人たちの支えによって成り立っていることを理解できた。

 自分から周りの人たちへと視点を広げることで、周囲と協力をしたり、友達の頑張りを応援したりするとともに、いつか自分も周りの人たちを支えられる存在になりたいという思いの育成につながっていく。児童の発達段階に応じて記事が効果的に活用された授業であった。

 

中学校の国語の学びを振り返り、国語の問題をつくろう 【実践校】札幌市立北都中学校  

<報告者>岩浅牧さん・羽ノ浦中学校教諭 

3年間の学習の確認手段 

岩浅牧さん

 中学3年の国語科における、学習の振り返りに新聞を活用した取り組みが報告された。

 振り返りを学習する「三年間の歩みを振り返ろう」(光村図書)は、中学3年の最後の学習単元に位置づけられている。

 この学習では、3年間の学びの中で印象に残っていることを整理し、冊子にまとめ、クラスで発表会を開き、交流することが一連の流れである。その学びを確認する手段として、新聞を活用した実践はとても興味深いものであった。

 これまでに私は「学校で勉強したことが将来、何に役立つのか分からない」という声を生徒たちから聞いたことがある。時間の経過とともに「あの時、学んだことが生かされている」と実感することはあっても、学習の最中に気づくことは稀(まれ)だ。本実践は、その疑問を解消する上で、速効性のある学習だといえる。

 実際、生徒からも「新聞に国語の要素がたくさんあることがわかった」など、学習の振り返りを実感した感想が報告されていた。

 新聞は、教科書を超えた『新しい学びを創る』うえで最適な手段の一つだ。2年連続でのウェブ開催は非常に残念だが、このような状況だからこそ生まれた『新しい学び』に、新聞が今以上に活用されることを期待したい。