持続可能な未来のために、ビジョンを描いて行動を起こそう。

 世界規模の気候変動や貧困、格差、食料・エネルギー問題など、私たちはSDGsの示す社会課題のまっただ中にいます。地方に暮らす私たちも例外ではなく、持続可能な地域の未来を築くために、みんなで手を取り合い、行動することが求められています。
 そこで、現在、沖縄県恩納村に駐在してSDGsの推進や地方創生プロジェクトに関わるSDGパートナーズ有限会社(東京都)の松原廣幸さんに、SDGsに取り組むためのヒントを教えていただきました。

地方からSDGsに取り組む意義とは

 SDGsとは国連が掲げている2030年までに達成すべき世界共通の目標です。遠い世界の話に聞こえるかもしれませんが、17の目標の中には「住み続けられるまちづくりを」「すべての人に健康と福祉を」「海の豊かさを守ろう」「ジェンダー平等を実現しよう」など、地方が抱える課題とリンクするものがたくさんあります。
 地方からSDGsに取り組む意義の一つが「つながり」です。例えば、東京の企業が徳島で何かを始めようとした時、今まではそのきっかけがありませんでした。しかし、徳島が活発にSDGsに取り組んでいるとなると、それをきっかけに徳島で一緒に活動していくという大義名分ができるわけです。今まで縁もゆかりもなかった外部の人とのつながりから、徳島の中でも新たなつながりが生まれ、行政や企業、大学、団体など縦割りのグループ同士で横の連携が広がっていく。SDGsとは、これまで分断されてきた人や社会の間に「つながり」を広げて、みんなでより良い社会を実現していくための「共通言語」のようなものです。

私たちにできることしなければいけないこと

 個人でも企業でも、SDGsに参加しようと思ったら、まずは将来、自分たちがどんな町でどんな暮らしをしたいのか、どんな会社でありたいのか、一人ひとりがビジョンを持つことがスタートです。 

 

 今日からできる取り組みを挙げると、マイボトルやエシカル消費の推進、リサイクルの徹底、ビーチクリーンなどたくさんありますが、それぞれの行動が将来のビジョンにつながっていないと単発で終わってしまいます。例えばビーチクリーンを続けるだけでは不十分で、ビーチクリーンから海岸の漂流ゴミの問題を発信し、みんなで将来どんな海岸にしたいのかを共有し、合理的な解決策を見つけて実践していくことが持続可能な未来につながるのです。
 将来のビジョンを描いて、そこから逆算して今できることを実践する、いわゆる「バックキャスティング」の考え方が重要です。「今できることの延長線上」で取り組むのではなく、将来のビジョンから逆算する発想だからこそ、大胆なアイデアや思いがけない連携が生まれ、実現できるという考え方です。

中小企業もSDGsで持続可能な経営を

 日本の上場企業の多くはすでにSDGsの取り組みを始めています。地方の中小企業であっても、SDGsの導入によってさまざまなメリットがあり、将来にわたり人と社会に必要とされる「持続可能な会社」を実現できると思います。
 メリットは大きく分けて4つあります。1つ目は経営理念とSDGsを関連づけることで会社の将来像が明らかになり、経営の軸足が定まること。2つ目は、SDGs経営をすることで競争力が向上し、社会・環境面に配慮した「サステナブル」な企業活動や商品開発が消費者へのアピールと自社のブランディングにつながること。3つ目は、新しい市場開拓や事業を創出できる可能性が生まれること。4つ目は、社員のモチベーション向上や離職率の改善、将来の優秀な人材獲得に結びつくことです。
 いわゆる「※ミレニアル世代」や「※Z世代」といわれる消費者層は、サステナブルな商品や企業活動に高い関心を持っています。SDGs経営はこれからの消費を牽引する世代の価値観と非常にマッチするものです。

※一般的に、ミレニアル世代(1981~96年頃に生まれ、2000年代に社会進出した)はIT技術の発達とともに育ったデジタルパイオニア世代で、Z世代(1990年代後半~2000年代前半頃に出生)は物心ついた時からインターネットとの距離が近いデジタルネイティブ世代といわれている。

共通言語は「SDGs」。全員参加ではじめよう

 SDGsの目標17は「パートナーシップで目標を達成しよう」とあります。SDGsを共通言語にして、人と人とのつながりや交流が増えれば地域を活性化することになり、産官学の垣根を越えた連携が実現できれば、課題解決に向けたイノベーションや新たなビジネスチャンスが生まれるかもしれません。SDGsをきっかけに、住民、企業、行政、農業者、漁業者、各種団体、学校、大学など、個別の立場や組織を越えて「つながり」を広げていくことが、徳島ならではの持続可能な未来につながると期待しています。
 未来をつくる17の目標の中には、皆さんが関わりたいと思うものがきっとあるはずです。たとえ小さなビジョンでも構いません。その目標を達成するために、今日からできることを決めて、ぜひアクションを起こしましょう。みんなのビジョンが社会の中でつながれば、未来を大きく変える可能性があります。

10年、20年先、あなたの住む町はどうあってほしい?

 

●静かで閑静な町 ●老若男女が暮らしやすい ●子育てがしやすい ●人と人との交流がある町 ●景観がきれい●生活インフラが整っている ●環境や社会課題意識が高い ●海と陸の自然が豊か ●収入が高い etc.
(図)恩納村の経済団体(商工会・観光協会・漁協・農協など)代表に聞く、将来のありたい姿 ※出典:恩納村、編集・加筆:(公財)日本交通公社・SDGパートナーズ(有)

 

松原 廣幸 氏(まつ ばら ひろ ゆき)
SDGパートナーズ有限会社 マネージャー
1991年生まれ。慶應義塾大学卒業。大学卒業後、コンサルティングファーム等での従事を経て、SDGパートナーズに参画。同社では中小製造業や、商社、東証一部上場のインフラ企業等のサステナビリティの支援に従事。2020年6月より恩納村に駐在し、SDGs推進戦略の普及啓発やプロジェクト全体の進捗管理など地方創生に関するプロジェクトを行ってきた。中学から大学までラグビーをする。

■SDGパートナーズ有限会社
企業や自治体、国際機関、NGO、学術界など様々な主体を「つなぐ」ことにより、SDGsが目標とする人類の幸せ(Well-being)の形を追求するための活動をサポートしている。特にビジネスが果たせる役割に注目し、SDGsを土台としたビジネスモデルの導入、サステナビリティ方針策定・実施、官民の連携・共創などの支援をリード。中小企業や起業家、NPOなどがSDGsを採り入れていくプロセスも応援している。

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第1回「SDGsとは?」
第2回「今日からはじめるSDGs」
第3回「ESD 持続可能な開発のための教育」
第4回「テーマ:環境」
第5回「テーマ:防災」