徳島を元気にする事業アイデア・プランコンテスト「とくしま創生アワード」のウェブセミナーがオンラインで開かれた。起業支援や起業家教育に携わる日本テクノロジーベンチャーパートナーズ(東京)代表取締役の村口和孝さんと、NPO法人ETIC.(エティック、東京)創業者の宮城治男さん、2019年度創生アワード最終審査進出者で、児童発達支援事業所を運営する合同会社ハビリテ(徳島市)代表の太田恵理子さんが登壇。未来を描き換える挑戦について意見を交わし、「情熱を持ってやりたいことがあるなら行動に移して」とエールを送った。セミナーには徳島のほか大阪、香川、島根などから70人が参加した。

村口和孝さん (日本テクノロジーベンチャー パートナーズ代表取締役)

自分の思い 表に出す場

 

宮城治男さん(NPO法人ETIC.創業者)

起こした事実が扉開く

 

太田恵理子さん(合同会社ハビリテ代表)

壁を乗り越え また進む

 

 村口 地方から世の中のために活躍できる道があると考えている。徳島から課題を解決する何かが生まれるために、いいキーワードはないかと思っていたら、「ビジョンハッカー」という新しい言葉を知った。

 宮城 私たち(ETIC.)が創った言葉で、ビル・ゲイツ氏設立の慈善団体と取り組んだ事業の中で2年前に生まれた。「ビジョン」は未来と現状、「ハック」は新しいものを創り出していこうという遊び心や、主体性の意を込めた。自分たちが求める社会へ、自分たちで描き換えていこうと。例えば、新型コロナの影響が広がっているが、不満を言って暮らすのではなく、「これは新しい事ができる機会かもしれない」と捉える。自らの意志で変えようという心意気を若者と共有したいと考えた。

 村口 「未来がこうなってほしい」という強いビジョンに対する情熱を基に、太田さんのように、これまで徳島や社会になかった新しいものを創ろうとする人が出てきている。

 太田 当初は未来を変えるためという感覚はなかった。息子が保育園に入れず、障害や病気を持った子どもを長時間預かる施設が欲しくて立ち上げた。目の前の壁を越えるために動いてみたら未来が変わった。一歩を踏み出すことは大切で、動くことで見える景色や関わる人が変わり、自分自身も成長できていると感じている。

 村口 そういった未来へのビジョンは、普通の人はどうやって持ったらいいのだろう。

 宮城 太田さんのような起業が一つの例で、壁に向き合うという姿勢や歩みそのものがビジョンハッカー。どんな過程で思いを形にしてきたのか聞きたい。

 太田 自分の困り事を解決したいというのが発端。そのために動いたら、自分だけでなく誰かの役に立っていると感じることが増えた。効果が波及している実感から視座も上がり、周りの人や社会に目が向くようになった。一歩進んで立ちはだかる壁を解決してまた進むという感覚。これからも同じように課題解決型で進んでいくと思う。

 村口 なるほどね。歩いた後に道ができるという言葉があるように、一歩踏み出すことが結果的に未来を変えている。

 宮城 ビジョンというと、正解のように捉えられがち。事業が成功して株式公開するというシナリオから逆算して計画を立てて準備するというように考えられていたと思う。今は時代の変化が非常に早いため、計画を練るより、思いを行動に移す力や、起こした事実によって次の扉が開かれていくのではないか。

 村口 未解決である「困り事」と、世の中が経験していない「変化」は、どちらも最初は未学習から始まるという共通点がある。

 宮城 要するに誰にも答えがないということ。答えは自分の中にあるかもしれないと考え、自らが描く側になるという心意気、主体性がハックするということではないかと思う。

 村口 困り事や変化に対して主体的にチャレンジするアイデアやプランが創生アワードに合っているかもしれない。未学習なことに立ち向かうのだから、未来に立ち向かう誠実さや、人を巻き込みながら壁を乗り越えていく情熱が重要。

 太田 周りには、自分が人に勧めたい物や体験にオリジナリティーを加えて唯一無二の事業を立ち上げた人もいる。個性から新しい価値が生まれると思うので、そういった視点の挑戦もしてほしい。

 村口 個性的な人生の延長線上にあるアイデアやプランは迫力があると思う。

 宮城 どうしてもやりたいという情熱があるなら、社会にニーズがあるかどうかは動きながら検証すればいい。情熱優先なのか、課題解決優先なのか、両方のアプローチがあっていい。

―応募を考えている人へ。

 村口 応募フォームに自分なりの考えや、やってみたい事をストレートに表現してほしい。出すのは恥ずかしいという人がいるかもしれないが、決してそんなことはない。自分の思いを表に出す場として活用してほしい。

 宮城 「やりたい」「やるしかない」「面白そうだからやってみたい」という思いがあるなら、すぐに小さい行動から始めて。仕事や学生をしながらでも、できるアクションを始める時代だと思う。その結果見えてきたビジョンをアワードで発信すると、仲間がつながっていく。

 太田 迷っている人は出すしかないと思う。サポーターら普段会えない人と関われたり、応募者同士でつながれたりするチャンス。応募は新しい一歩。やりたいことが明確になって、過去の経験の棚卸しにもなるので応募フォームに書き出してみて。

 むらぐち・かずたか 1958年生まれ、海南町(現海陽町)出身。慶應義塾大卒。1998年、(株)日本テクノロジーベンチャーパートナーズを立ち上げ、日本初の投資事業有限責任組合を設立・登記した。2019年、DeNAをはじめとする数多くの創業支援、ベンチャーキャピタリストという職業を日本で確立した功績や、長年にわたる起業家教育の取り組みが評価され、日本ベンチャー学会の「松田修一賞」を受賞。

 みやぎ・はるお 1972年生まれ、小松島市出身。早稲田大在学中の1993年、学生起業家の全国ネットワーク「ETIC.(エティック)学生アントレプレナー連絡会議」を立ち上げる。2000年にETIC.をNPO法人化し、社会起業家の育成支援に取り組む。11年に世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダーズ」選出、文科省参与や中央教育審議会臨時委員などを歴任。00年から21年まで代表理事を務めた。

 おおた・えりこ 1986年生まれ、上勝町出身。大学卒業後、機械メーカーに勤務。長男の病気をきっかけに、退職して福祉の世界で事業を始めようと決意。2018年に合同会社ハビリテを設立。19年、徳島市に児童発達支援事業所「おやこ支援室ゆずりは」を開業した。「Japan Challenge Gate(ジャパン・チャレンジ・ゲート)2020」で中小企業庁長官賞受賞。

 

事業アイデア 実行委が募集 

 とくしま創生アワード実行委員会は、県内外から徳島の発展や地域課題の解決、豊かさの創出につながる事業アイデア・プランを募っている。サポーターを務める県ゆかりの経営者らが審査、支援する。小中高生と大学生向けのアイデア応援企画「ひらめき賞」も立ち上げた。

 募っているのは、事業化を前提としたアイデアやプラン。計画の実現を目指す「アイデア部門」と、開始後3年以内または立ち上げ段階にある「プラン部門」の2部門を設けている。書類審査を経て、2022年1月18日に徳島市内でプレゼンテーションによる最終審査を開き、各部門のグランプリなどを表彰する。

 新設した「ひらめき賞」は、小中高生と大学生を対象に、新しい商品やサービス、社会システムといった「アイデアの種」を募る。環境問題や文化、スポーツなどテーマは自由で、個人または団体で応募可能。優秀なアイデアには、商品券と最終審査での発表の機会が贈られる。審査や支援を担当する特別サポーターに、太田恵理子氏が就く。

 いずれも締め切りは11月1日。応募手続きは、創生アワードのホームページにある専用フォームから行う。問い合わせは、徳島新聞社内の事務局、電話088(655)7331。