国重要文化財に指定されている「切幡寺大塔」=阿波市市場町

 四国霊場10番札所・切幡寺(徳島県阿波市市場町)は、阿讃山地・切幡山の中腹、標高155メートルの辺りに境内を構える。県道・鳴門池田線を走っていると、はるか仰ぎ見る山腹の一角に、その姿が見える。山寺の雰囲気たっぷりで、なかなかにいい感じだ。

 弘仁年間(810~824年)、弘法大師空海が開いたと伝わる古刹である。そのシンボルが「切幡寺大塔」だ。国の重要文化財にも指定されていて、徳島の寺院建築では超A級の存在である。

 山門をくぐると333段の長くて急な石段があり、さらに女厄坂、男厄坂を登り切ると、本堂がある(本尊は千手観世音菩薩)。その先の高台に、大塔がそびえ立っている。高さ約24メートルの堂々とした二重塔である。

 二重塔の場合、通常の建築様式であれば、初重(下段屋根)と二重(上段屋根)の間の建物本体は、円筒状となる。ところが切幡寺大塔は、この部分が正面・側面とも幅三間(一間は約1・8メートル)の方形(四角柱)となっている。こうした様式(二重方形塔婆)は全国的にも例がなく、非常に貴重な仏教建築である。

 切幡寺大塔はもともと、江戸時代初期に豊臣秀頼が父・秀吉の菩提(ぼだい)を弔うため、住吉大社神宮寺(大阪市)に建立したものである。明治維新後の廃仏毀釈運動で神宮寺が廃寺となった際、解体・散逸するのを憂いた切幡寺が購入し、1873(明治6)年から10年間かけて移築した。

 この間の労力やいかに。そのおかげで、私たちは現在、この大塔をめでることができるのである。

〈2021・9・21〉