徳島大出身の漫画家大智(だいち)そらさんが、月刊漫画誌「マガジンR」で昨年12月からプロデビュー作となる「The SIX 隻腕(せきわん)の奪還者」を連載している。子どものころからの夢をかなえ、プロの漫画家として飛躍を目指す大智さんに、デビューまでの経緯や今後の目標、徳島での思い出を聞いた。

 

原稿執筆中の大智そらさんの手

 

 ― 徳島大出身とのことだが。

 出身は兵庫県ですが、高校受験の時から徳島に来たいと思っていて、徳島大に4年間通っていました。

 ― 徳島でも漫画を描いていたのか。

 初めて原稿を1本完成させたのが大学に入ってからでした。自分の作品は日本が舞台ではないファンタジーなので具体例は挙げられませんが、町の雰囲気やキャラクターの表情などに、徳島での体験を知らずに取り入れているところはあると思います。

 ― 漫画家を志したきっかけは。

 幼稚園のころから絵を描くのが好きだったので、漫画家を目指すようになりました。影響を受けた作品はたくさんありますが、高橋留美子先生の「らんま1/2」が原点だと思います。現実的に漫画家を意識し始めてからは、佐原ミズ先生、黒乃奈々絵先生の漫画を特によく読み、勉強しました。

 

「The SIX 隻腕の奪還者」の原稿。繊細な線と迫力ある構図が目を引く。

 

 ― 漫画の技術をどう磨いたのか。

 独学です。漫画を読んだり模写をしたりしたほか、背景については参考になる本を買うなどしました。連載開始直前には新川直司先生のところで、非常に短期間ですがアシスタントとして勉強させていただきました。

 ― これまでの受賞歴は。

 月刊少年マガジンの新人漫画賞「グランドチャレンジ」で、13年の第23回に「零世界~white DOLL~」、第24回に「CHICKEN'S CLUSTER」でそれぞれ奨励賞を、14年の第27回に「背徳者のアリア」で佳作をいただきました。

 中でも「背徳者のアリア」は、前2作と違って担当の編集さんと打ち合わせをして作る中で、読者に伝わるように絵で表現することの難しさを感じ、漫画を描くのはこんなに大変なのか、と思いました。受賞のお電話をいただいた時は純粋にうれしかったです。編集長からのコメントも本当にありがたく、今後ももっと頑張ろうと思いました。

 ― マガジンRで連載が決まった時の心境は。

 周りの方に報告をして、喜んでもらえたのはうれしかったです。初連載だったので、とにかく今できる最高のものを描こうと思いました。ただ、やってやろうという気持ちの半面、(上京、アシスタントなど)描く環境を整えなければ、という現実的な課題への不安もありました。

 ― プロデビュー作となった「The SIX 隻腕の奪還者」はどんな作品か。

 唯一の肉親を失って絶望した主人公が、戦うために立ち上がる再起のお話です。その際に装備する義肢や、義肢での戦い、主人公とそれをとりまくキャラクターたちそれぞれの葛藤やぶつかりを読んで、燃えてほしいです! キャラクターの表情にこだわって描いているので、見てほしいですね。

 

「The SIX 隻腕の奪還者」単行本第1巻の表紙

 

 ― 目標としている漫画家や今後の抱負は。

 目標としているのは高橋留美子先生と佐原ミズ先生の作品です。絵や見せ方など、常に勉強し、進化していく漫画家でありたいです。名前で作品を手に取ってもらえるようになりたいです。

 ― 徳島の思い出は。

 川沿いなどの平らな道を散歩するのが好きでした。阿波踊りを見るのも好きで(踊りはできませんが)、あらゆるところで踊っているのを見たり、音を聞いたりしながら、出店でかき氷を買ったり、ラムネを買ったりしたのが楽しかったです。

 よく散歩した川沿いや、徳島大の図書館は印象に残っています。食べ物では、ちりめんじゃこにスダチとポン酢をかけて、ごはんにのせて食べるのが好きです。飽きずに何日でも食べられます。鳴門金時を蜜につけたお菓子も好きです。

 ― 漫画家を目指している若者にアドバイスを。

 漫画だけを学ぶのではなく、いろいろな経験をするのが良いと思います。進学が回り道とか、就職が回り道とか考えず、そこで見たこと、聞いたこと、したことが漫画には生きるので、広い視野をもって頑張ってほしいです。専門知識は、やりながら現場で身についていくと思います。
 
 ― 徳島県内の読者にひと言。

 初めまして、大智そらです。初連載、今の時代では珍しいかもしれないアナログ作品です。緊張や高揚がそのまま乗った線で、今描ける最高のものを描いています。ダークファンタジー、義肢、少年たちと化け物との戦い、これらに興味がある方もない方も、ぜひご一読ください! 応援よろしくお願いいたします!

 

 「The SIX 隻腕の奪還者」単行本第1巻は講談社から6月15日発売。