兵庫県北部の但馬地方から飛来し、鳴門市大麻町で巣作りをしている国の特別天然記念物コウノトリを地域に根付かせるための官民組織「コウノトリ定着推進連絡協議会」が21日、発足した。鳴門市大津町のJA大津松茂で開かれた初会合では、年間を通じた餌場の確保や見物客のマナー対策などの課題が示され、五つの専門部会を作って取り組んでいくことを決めた。
協議会は徳島県や鳴門市、地元JA、生産者団体、徳島大、四国大、日本野鳥の会県支部などの10団体で構成し、コウノトリの人工飼育と野生復帰に取り組む兵庫県立コウノトリの郷公園(豊岡市)の江崎保男統括研究部長をアドバイザーに迎えた。
江崎部長によると、日本で野生のコウノトリが絶滅した1971年以降、人工飼育を進めてきた同公園の周辺以外でコウノトリの巣作りが確認された例は鳴門市が初めてで、野外繁殖の期待が持てるという。江崎部長は大麻町で巣作りをしている2羽について「雌がまだ2歳と若く、今年産卵できるかどうか分からないが、ぜひ長い目で見守ってほしい」と話している。
今後の展開次第では鳴門市周辺が但馬地方に次ぐ国内第2の「コウノトリの里」になる可能性もあり、協議会では定着と地域活性化を目指して<1>生物調査<2>餌場確保<3>啓発<4>営巣<5>ブランド推進-の5部会を設置することにした。
生物調査部会では、鳴門に飛来したコウノトリが何を食べているかや、餌となるザリガニ、カエルなどの生息状況を調べる。餌場確保部会は、地域の耕作放棄地に水を張るなどし、餌となる生き物がすめるビオトープづくりの実験を行う。
2羽が巣作りをしている大麻町周辺では見物客が増えていることから、協議会の会員らが現地でマナーの悪い見物客に注意をしやすいよう、パトロール中であることを知らせる腕章を身に着けることも確認した。
初会合には各団体の代表ら約30人が出席。会長に、県内レンコン農家でつくるNPO法人れんこん研究会の竹村昇理事長(62)=鳴門市大麻町三俣=が就いた。竹村会長は「コウノトリが定着することは環境に配慮した農業をしている証明にもなる。将来的にはブランド品づくりにつながればうれしい」と話した。