徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
麻疹は怖い病気です。これまでに多くの人たちが麻疹で命を落としてきました。また神経系の後遺症に苦しむ人もあります。今月は今年春に外国から持ち込まれて問題になった麻疹について考えてみました。
日本は2015年に麻疹排除国としてWHOから認定されました。これは日本固有の麻疹の発生数が一定以下になったと認められたためで、発生がゼロになった訳ではありません。
最近日本で見られる麻疹は外国から持ち込まれた麻疹です。これは遺伝子型から診断されます。世界にはまだ麻疹が流行している地域が沢山あります。日本でも麻疹に対する免疫のない人が増えてくると、外国から麻疹ウィルスが入ってきた時に感染が蔓延する恐れがあります。
免疫のない人が麻疹に接触するとほぼ100%発病します。不顕性感染がない病気です。麻疹の症状は高熱と発疹が特徴ですが、発病初期には一般の感冒と区別はつきません。高熱に加えて激しい咳や鼻水、眼脂などがあり、発疹が出るのは発病後3~4日たってからです。体力や抵抗力のない子どもが高熱、咳、食欲低下などから脱水症を起こし、肺炎や気管支炎、中耳炎などを合併することがあります。合併した細菌感染症に対しても麻疹によって抵抗力が低下して重症化します。
麻疹ウィルスに対して直接有効な治療法はありません。罹れば対症療法しかありません。罹る前の予防が大切です。予防にはワクチンが有効で、麻疹の蔓延を防ぐためには子どものワクチン接種率を100%に近づけることが大切です。