「津波が来るかもしれない」。小笠原諸島西方沖を震源とする地震が発生した30日夜、津波を警戒する徳島県沿岸部の住民にも緊張が走った。日本の近海で起こったマグニチュード8・5の巨大地震。津波はないとの情報を得るまで、テレビの前で多くの人が身構えた。いつか来る南海トラフ巨大地震。備えの必要性をあらためて痛感する夜となった。
 
 美波町の自主防災組織「西の地防災きずな会」の酒井勝利会長(71)は、テレビの速報で発生を知った。
 
 「大きい地震だ。津波が来るかもしれない」「津波はどれくらいで来るのか」
 
 詳しい情報を得ようとテレビにくぎ付けになり、「津波の恐れがあれば、すぐに会のメンバーに電話しようと思った」と言う。
 
 前日の29日夜には、近くの由岐公民館で町自主防災会連合会の総会があり、災害への備えや心構えを確認し合ったばかり。「最近は天災が多い。気を引き締めて備えを万全にしたい」と話した。
 
 地震発生直後につけたテレビで地震を知った牟岐町自主防災組織連絡協議会の岡田好二会長(76)=同町牟岐浦=は、津波情報が届くまでの時間にもどかしい思いを募らせた。
 
 「震源地が遠く、揺れもなかったが、まず情報が欲しかった」と振り返る。鹿児島県・口永良部島(くちのえらぶじま)での噴火に続く巨大地震の発生に「いよいよ南海トラフ巨大地震が近づいてきているという思いがした」と語った。
 
 徳島市の津田新浜地区自主防災会連絡協議会の山口勝秀さん(73)=同市津田本町1=は地震発生直後、家族と高台に避難する相談をした。津波はなかったものの、「南海トラフ巨大地震はいつ起きてもおかしくない。これまで以上に住民への啓発に力を入れたい」と思いを新たにしていた。