いつか必ずやってくる。しかし、その日がいつか分からない災厄に、取り得る態度は二つある。これも運命と諦めて今日を楽しむか、それとも可能な限りの備えをして、少しでも被害を小さくするか

 常識的には後者を選ぶ。だが、この数字を見れば気力もなえそうになる。南海トラフ巨大地震が起きた場合、影響は20年後まで及び、経済的被害などが1410兆円に上るとの推計を、土木学会が公表した。備えには、どれほどの費用がかかろうか

 政府推計の220兆円も衝撃的な数字だったが、それをはるかに上回り、「国難」と呼ぶべき水準である。深刻な原発事故は想定に入っていないから、悪くすれば被害額はもっと膨らむ

 発生確率の高まる首都直下地震も、20年間で778兆円と見積もった。土木学会は懸念する。「大災害が起これば、日本は最貧国になりかねない」。人口減少によるこの先の国力低下を考え合わせると、杞憂とはいえない

 本県もこのままでは、巨大地震後の2年間で、域内総生産の40~70%が失われる壊滅的な打撃を被る。諦めている時間はない

 財政難のこの時代、「いつか」に備える予算とて限りがある。災害の姿を見極めて、緊急性の高いものから地道に対策を進める賢い選択が必要だ。災難は人間の真の試金石という。その備えについても同様だろう。