竹林の中で静かにたたずむ新四国霊場の石仏。うっすらと表面が苔むしている=阿南市羽ノ浦町

 全国各地に「新四国八十八カ所」と呼ばれる巡礼場所がある。四国八十八カ所霊場巡りのミニ版で、江戸時代に設けられたのが最初と言われている。

 

 昔は交通手段が発達しておらず、多くの人が四国を訪れて巡るのは困難だった。このため各地の代表が各札所から砂を持ち帰り、本尊を模した石仏を造って安置した。寺の境内の一角や集落に近い山などに設けられ、巡礼距離は数十メートルから数キロと各地でさまざまだ。

 徳島県内にも数多く存在する。その中の一つ、阿南市羽ノ浦町岩脇にある取星寺(しゅしょうじ)(秩父裕文住職)の「新四国」を訪ねた。境内から付近の松寿山、霊岩山の約1キロを巡る。

 駐車場に立てられた解説板によると、1816年から25年がかりで造られた。実際の四国八十八カ所の位置関係を忠実に縮小しており、本尊や石仏は約200体あるそうだ。ほとんどの札所で本尊と大師像が並び、岩のほこらに収められている。こうしたタイプは珍しいという。

 一番札所から次々に現れる石仏の表情は、いずれも優しく、見ていて飽きない。周囲の竹林が風情を漂わせ、時折樹間を吹き抜ける風が心地よい。道中はアップダウンが続くものの、疲れはなく癒やされた気分になる。