大学読書人大賞を受賞した河野裕さん著「いなくなれ、群青」

 大学の文芸部が学生に最も読んでほしい本を選ぶ「2015大学読書人大賞」に、徳島市出身の作家河野裕(こうの・ゆたか)さん(30)=兵庫県西宮市=の小説「いなくなれ、群青」(新潮文庫)が決まった。授賞式が12日、東京・日本出版クラブ会館で行われる。

 大学読書人大賞は早稲田大、関西大、九州大などの文芸部27団体でつくる実行委と出版文化産業振興財団が2008年に創設し、今年で8回目。

 今回の対象は13年11月から14年10月までに国内で第1刷が発行された本。まず各文芸部が3作品を1位3点、2位2点、3位1点の傾斜配点で推薦し、上位20作品を候補に選定した。各文芸部が全候補作を読み、気に入った作品の推薦文を作って公開した後、投票を行って順位を付けた。

 「いなくなれ、群青」(14年9月刊)は、外界と隔絶した島が舞台。住民は島に来る前の記憶をなくしたまま穏やかに暮らしているが、主人公の少年は、ある少女との再会をきっかけに島の謎と向き合っていく。

 推薦文では「叙述トリック、幻想的な文体、そして心の奥を揺さぶってくるようなテーマ」(国際基督教大)、「透明感ある文体と論理的なプロットは読む者を楽しませ、物語に引き込み、そして離さない」(中央大)などの評価を得た。

 2位は「ソロモンの偽証」(宮部みゆき著、新潮文庫)、3位は「SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと」(チャールズ・ユウ著、早川書房)だった。

 河野さんは徳島市立高を経て大阪芸術大文芸学科卒。若年層向け娯楽小説(ライトノベル)のガイド本「このライトノベルがすごい!2013」(宝島社)の人気投票で著書「サクラダリセット」(角川スニーカー文庫、全7巻)が9位に入るなど、注目を集めている。

 河野さんは「大学読書人大賞は非常にユニークで、古典SFとライトノベルが肩を並べて候補に入ることもある。これほど自由度の高い賞は他に知らない」とした上で「賞の知名度が高まっていくとうれしい。それに少しでも貢献できるよう、執筆に励みたい」と意欲を見せている。