那賀川の衛星写真が「ここの地形すごい」「推せる」といったコメントと共にSNS(会員制交流サイト)に投稿され、注目を集めている。投稿画像は、徳島県那賀町相生地区の那賀川流域を撮影した写真。山間部を流れる那賀川を発着点にU字形を描くように集落が立ち並ぶ。かつては集落部分に川が流れていたのではないかと想像できる。

流れが変わったように見える那賀川の地形=那賀町の相生地区 出典:国土地理院ウェブサイト

 このような地形は相生地区に4カ所ある。最も規模の大きなU字形は約5キロメートルに渡って集落が続いており、小中学校もある。この南半分に位置する「延野」という地域には266世帯618人が暮らしているという。この地形はどのように形成されたのか、徳島大大学院の西山賢一准教授(地質学)に聞いた。

 ―この地形は珍しいのでしょうか?

 これは「蛇行切断」という地形で、山地を流れる河川ではそう珍しくありません。ただ、県内で大々的なものは那賀川にしかなく、四国でも四万十川と並ぶ両巨頭だと思います。

 ―蛇行する川の流れがショートカットしたように見えますが、どうやってできたのでしょうか?

 雨で川が増水すると流れが速くなり、カーブした部分の外側の斜面が削られていきます。カーブが連続していると両側から山が削られることになり、そのうち貫通して流れが変わります。水が流れなくなった場所はそれ以上削られないので、川より一段高い平地になります。こういう場所は住宅街になりやすいですね。

地形について解説する西山賢一准教授=徳島市の徳島大常三島キャンパス

 ―もともと川だった場所は災害に弱そうに思うのですが。

 川から5、6メートル高い場所は洪水の被害を受けにくく、蛇行切断によってできた平地の大部分はこの高さをクリアしています。また、地震で起こる液状化現象は、砂が堆積した土地で発生しやすくなっています。川の上流に位置し、砂利が堆積しているこの地域では液状化が起こりにくいのです。ただ、周囲の山で土砂崩れが起こる可能性はあるので、ハザードマップを確認して注意してください。

 ―那賀川の流れはいつごろ変わったんですか?

 蛇行切断によって平地になった場所に建つ相生中学校のグラウンドで、2016年にボーリング調査が行われました。この調査では、地質学で年代を特定するのに使う火山灰が積もっているかを調べています。その結果、7300年前に噴火した火山の火山灰は残っていましたが、3万年前の火山灰は残っていませんでした。つまり3万年前はこの場所は川があって火山灰も流されてしまっていた。しかし、7300年前までには川がなくなり平地になっていたため、火山灰が積もったということです。相生地区のほかの3カ所もほぼ同時期に切断されたと考えられています。

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 数万年という悠久の時を経て変化を遂げた相生地区の地形に、改めて自然の雄大さを感じた。