徳島県内にある一般利用可能な官公庁食堂を食べ歩き、各食堂の紹介とお薦めメニューを「食リポ」するシリーズ企画。第2回は徳島市役所(徳島市幸町2)の食堂へ。徳島市役所は徳島県の県都にして最大都市の行政拠点で、職員らが日々業務にいそしんでおり、食堂は現庁舎が建てられた1984年以来変わらず今の場所にある。庁舎で働く職員、訪れる県民らに35年以上の間、おいしい食事を提供し続けてきた憩いの場を訪ねた。

エレベーターを降りるとすぐに今回お目当ての食堂入り口がある=徳島市役所

 食堂は地上14階建ての市庁舎12階にある。広さは約605平方㍍、全216席。広々としたスペースに加え、南北両側の全面に窓があるために開放感たっぷり。12階という立地もあり、北に城山と吉野川、南に市街と眉山を見渡す眺望は気持ち良い。

 「眺望を目当てに、窓際から席が埋まっていくんですよ」と、料理長兼責任者の祖川恵さん(39)。「おいしく、バランス良く、出来たてを食べてもらう」のが食堂のモットーだ。メニューは全部で30品以上。最近、ハンバーグカレーとハンバーグハヤシも新しく加わった。

徳島市街や眉山を見渡す眺望は爽快かつ開放的=徳島市役所

 人気メニューは500円の日替わり定食で、主菜、ご飯、副菜2品、みそ汁、漬物がセット。2年ほど前からは日替わり定食に50円を追加すると、ご飯を白米から雑穀米、もしくはブロッコリーに替えられるようになった。

 この日は、下味にかつお節を加えた和風唐揚げを主菜に、副菜がジャガイモのチーズ焼き、キノコのマリネ。管理栄養士が栄養バランスを考えて作った献立で、ボリューム感がある上に、盛り付けの彩りも鮮やかな組み合わせだ。

和風唐揚げを主菜にした、取材当日の日替わり定食=徳島市役所

 メニューの中でもチキンカツ定食と唐揚げ定食、鶏丼は厨房(ちゅうぼう)での手作り。特に鶏丼について「他の店の鶏丼とは一味違う」と、祖川さんは力を込める。

 鶏丼の肉は唐揚げ4個分をぶつ切りにしたもの。肉の下には定番のキャベツではなく、きんぴらごぼうを敷くのが、この食堂のオリジナルだ。たれは歴代の料理長が代々引き継いできた秘伝の味で、しょうゆベースにとろみを付けており、「甘酸っぱい味わいが食欲をそそる」と言う。

 料理長を務めて今年で丸3年、6人のスタッフと一緒に日々忙しく立ち働いている祖川さんは「窓から見える開放的な眺望と、バラエティー豊かな日替わりメニューを楽しみにして来てほしい」と話している。

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 祖川さんの話で興味を引かれ、食リポに選んだのは問答無用で「鶏丼」一択。食堂が混み合う前の午前11時半に注文した。いかなる鶏丼だろうかといやが応でも期待が膨らむ。

 給仕されるや、たれの甘酸っぱさと、唐揚げの香ばしさが絡み合った濃厚な香りの洪水が押し寄せる。鼻こうをくすぐる香りに刺激されてか、「ギュルルッ」と警報を鳴らすわが胃袋は食べる前から戦闘モード。ぶつ切りにした唐揚げの上にかかったたれの照り具合がなんともうまそう。

秘伝のたれを使った食堂オリジナルの鶏丼=徳島市役所

 まずは主役の鶏肉を一口ほおばってみる。食堂自慢の唐揚げをぶつ切りにした状態でありながら衣はサクサク、肉は柔らか。肉汁が秘伝のたれの甘酸っぱさと絡んで独特の味わい。うぬぬ、主役は申し分なしの仕上がりのようだ。

 肉の下に敷いたきんぴらごぼうは、さしずめアクセントが効いた名脇役だろう。衣のサクサクとは異なるシャキシャキの食感でサポートする。口の中ではサクサクとシャキシャキのハーモニーが心地よく奏でられる。

 とりわけ存在感を放つのが秘伝のたれ。これがけっこう濃厚な味わい。きんぴらごぼうとも絶妙に絡んで良し、ご飯に染み込んでも良し。このたれだけでご飯2、3杯は食べられそう。こいつは何げに主役を食う悪役か、くせ者俳優といったところか。

 白いご飯の上を舞台に繰り広げられる三者三様ならぬ、三(味)三様の特徴を生かした味の融合。

 やめられない、止まらない。箸を持つ手がもう止まらない。一心不乱に胃袋にかき込む至福のひととき。丼鉢1杯の鶏丼をわずか5分ほどでぺろり完食と相成った。そして食後の余韻を、横の窓から見える城山や吉野川と分かち合う。

穏やかな時間が流れる食堂での昼休みのひととき=徳島市役所

 気が付けば正午。続々と食堂を訪れる職員の皆さん。穏やかな時間が流れる食堂での昼休み。笑顔の中でのランチと語らい。そんな日々の貴重な時間を支えている祖川さんら厨房のスタッフに最敬礼をして、食堂を後にしたのだった。