新聞を授業で活用するNIE活動を支援するため、徳島県の教育界と新聞関係者でつくる県NIE推進協議会は毎年、県内の小中高校をNIE実践校に指定し、徳島新聞と全国紙計5紙を一定期間、無償で提供している。2021年度は8校を指定。各学校に配布されたタブレット端末も活用しながら、それぞれが新聞を使った授業に取り組み、成果を上げている。11月は教育への新聞活用を促すNIE月間。各校での多彩な実践を紹介する。

 

調べた成果を新聞に

鳴教大付属小(徳島市)

 誰もが暮らしやすい町にするためにはどんな仕組みや取り組みが必要か。鳴門教育大学付属小学校の4年生は、福祉の観点から社会の在り方を考える総合学習を進めている。11月2日には障害者による「パラスポーツ」について調べた内容を、新聞形式でまとめる活動を行った。

タブレットを使い「パラスポーツ」についての記事を書く4年生=鳴門教育大付属小

 「パラスポーツって何」「どんな競技があるの?」「魅力は?」。児童は前日に新聞やインターネットで調べた取材メモを基に記事を書き始めた。見出しも考えて写真も選ぶ。全てタブレットでの作業だ。「5W1Hを思い出そう。記事には自分の考えではなく事実を書くこと」。担任の田中將太教諭がアドバイスする。

 山下望さんは、パラスポーツの魅力を紹介する記事を書き上げ、「パラスポーツは誰もが主役に」との見出しを添えた。「読む人を引きつける見出しだね」と田中教諭が評価すると、他の児童も「記事を読まなくても分かります」などと発言していた。江口智啓(とものり)さんは「新聞は記事と見出しと写真などで伝えるから、読む人にとても分かりやすい」と新聞作りに興味を持ったようだ。

 児童は後日、記事を紙面に割り付け、A4判見開きの新聞に仕上げた。

 田中教諭は「新聞は情報が取捨選択されていて、子どもたちも必要な情報を選びやすい。言葉も精選されているので語彙(ごい)も豊かになる」と話し、教科横断的に活用していくことの大切さを強調した。

 

低学年に楽しさ発信

撫養小(鳴門市)

 撫養小学校6年1組で10月28日にあった国語科の授業。「ニュースを発信しよう」の単元で、低学年にも知ってほしい新聞記事をまとめた壁新聞「撫養っ子タイムズ」の製作に取り組んだ。

興味のある新聞記事を集め、どんな見出しにするか考える6年生=撫養小

 防災、SDGs、選挙など興味のあるテーマごとに分かれた五つのグループで、各自が選んだ記事を紹介し、どんな見出しにするかを話し合うことで、伝えたいことに合わせた構成を考えた。

 海の環境がテーマのグループは、網に絡まった魚について書かれた記事などを基に「ごみのポイ捨てのせいで、魚が食べられなくなっていく。一人一人がごみの分別をする大切さを感じる見出しにしよう」と話し合った。選挙を取り上げたグループは、投票率を上げる対策として、選挙の重要性、必要性を訴えるような見出しにすることにした。

 活発に意見を出し合っていた奥畑聖梛(せな)さんと樋口誠太さんは「1、2年生にも分かる言葉を使って、ニュースの楽しさを伝えたい」と意欲的に取り組んでいた。

 実践指定は1年目で、授業だけでなくさまざまな機会を捉えて新聞が活用されている。このクラスでは、児童が記事を基にクイズをつくり解き合ったり、朝の時間に担任が新聞各紙の1面を紹介したり。担任の藤倉新教諭は「新聞に慣れるとともに社会情勢への関心も広がるように、意識的に新聞を話題にしている」と話していた。

 

カタカナ見つけ分類

立江小(小松島市)

 立江小学校の2年生11人は10月28日、新聞からカタカナ言葉を探して仲間分けする国語科の学習を行った。1学期に習った単元だが、新聞を教材に活用するのは初めて。言葉が豊富な新聞を使うことで知らない言葉にも触れ、児童の語彙(ごい)力を育てたいと、担任の濱田江利子教諭が改めて設定した。

阿波っ子タイムズの記事からカタカナ言葉を探しノートに書き込む2年生=立江小

 児童は阿波っ子タイムズを机に広げ、早速、見出しや記事の中からカタカナ言葉を探し始めた。コロナ、サテライト、ノルウェー、ジェンダー、アミコ...。見つけた言葉を「外国の地名・人の名前」「外国から来た言葉」「音や動物の鳴き声」「仲間が分からない」の四つに分けてノートに書き込んでいく。その後、グループになり、自分の仲間分けが合っているかどうかを確認し合った。

 「今日の勉強で何か気付いたことはありましたか」と濱田教諭が問い掛けると、「外国から来た言葉が多かった」「初めて知ったカタカナがあった」。西浦吏(り)玖(く)さんは「新聞にはカタカナが多かったので、いっぱい見つけられた。カタカナ以外の言葉も覚えたい」と意欲を見せていた。

 実践指定初年度の立江小学校では、阿波っ子タイムズが届く毎週火曜日を中心に、朝の活動の時間に全学年で活用。興味のある記事を読んだり、スクラップして感想を書いたりするなど、学年ごとに工夫しながら学習を進めている。今後、高学年で複数紙の読み比べや学習の成果を新聞形式でまとめる活動も取り入れる考えだ。

 

紹介したい記事発表

池田高辻校(三好市)

 池田高校辻校では本年度、初めてNIEの実践指定を受け、9月から徳島新聞と全国紙が学校に届けられている。これらの新聞は閲覧台に掲示されているほか、3年次生の選択科目「現代世界と日本」の授業で活用している。

各自で作成した新聞記事紹介のレポートを発表する3年生=池田高校辻校

 10月14日の授業では、3年生9人が、9月に読んだ記事の中から全校生徒に紹介したい記事を選んで、それぞれのタブレットで記事の概要とその記事を選んだ理由をまとめた。

 授業の最後では、3人の生徒がひとまず完成させたリポートをスクリーンに映しながら「この記事は9・11同時多発テロから20年たったことを伝える記事。犠牲者の娘がアフガン戦争のことに触れて、憤っていたことが印象に残りました」などと発表。記事を選んだポイントやリポートのまとめ方などについて、為国正孝教諭が講評した。

 生徒が仕上げたリポートは、記事と一緒に全校生徒が出入りする玄関に掲示。生徒たちの注目を集めている。

 このクラスでは、継続的にSDGsや世界の紛争などに関する記事を題材にした授業が行われており、三好瑠衣さんは「ネットニュースとは違い、確かな事実に基づいているのが新聞記事。いろんな新聞を読んで、情報を見極める力がついたと思う」。

 為国教諭は「まずは新聞を読む素地をつくることが大事。このクラスの活動によって、全校生徒に関心が広がればいいと思う」と話している。

 

クイズで関心高める

生光学園中(徳島市)

 実践指定2年目の生光学園中学校で、昨年度から継続して行われているのが、阿波っ子タイムズの記事を基にしたクイズの作成だ。放課後に活動するNIE推進委員会(SNPC)のメンバー7人が担当し、全校生徒に定期的に配って新聞に親しむ機会を提供している。

クイズの採点をする生光学園中の生徒。奥の壁には切り抜き新聞を掲示している=生光学園中

 クイズの内容は多彩だ。9月21日付の阿波っ子タイムズからは、1面の「中学生の自転車事故、徳島県ワースト3位」の記事から、中学生1万人当たりの通学時自転車事故件数や守らなければならないルールについて穴埋め問題を出題。このほか、こども鳴潮の書き写しやSDGsワークシート、ガラス工芸についての英文を問題にした。

 問題を考えるのも工夫がいる。また、全校生徒から解答用紙を集めて、採点するのも活動の一つだ。楽しそうに採点していた2年生の渡辺紗良さんは「問題は、大切なところを選んで作った。クイズにするためには新聞をよく読む必要があり、それによって学んだことがたくさんある」と話す。

 生光学園中学校では、新聞切り抜き作品づくりにも力を入れており、SNPCのメンバーが率先して行っている。気になる記事を切り抜いて、コメントを書いたものを随時集会所に掲示。指導する佐近隆義校長は「これを見て、自分もやってみようという生徒が増えればうれしい」と今後の広がりに期待している。

 

議論し考える力養う

県立川島中(吉野川市)

 県立川島中学校の3年生は10月22日、広島県への修学旅行を12月に控え、社会科の授業で新聞を使った平和学習に取り組んだ。

戦争関連の記事を読んで記した感想について友達と意見交換する3年生=県立川島中

 原爆の投下や沖縄戦、戦争体験談など、生徒が前もって模造紙に貼っておいた数十枚に及ぶ新聞記事を教材に活用した。その中から関心を持った記事を一人一枚ずつ選んで写真を撮り、各自のタブレットのワークシートに取り込む。さらに記事を熟読し、考えたこと、感じたことをキーボードで打ち込んでいった。

 頃合いを見計らって山城裕貴教諭が「自分の考えたことを友達に見せて感想を聞こう。目標は3人」と意見交換を促した。他人の異なる視点に気付いて議論し合うことで多角的に考える力を養い、学びを深めさせたいとの思いがある。生徒は複数の級友を渡り歩きながら思考を巡らせた上で、ワークシートの最後の課題「次世代へ伝えたいこと」をまとめ上げた。

 「不自由なく過ごせる今の時代を当たり前と思わないで」と書いた熊本愛美さんは「教科書と違って、新聞には多くの戦争体験者の声が出ているので戦争を深く知ることができた」と手応えを感じていた。

 県立川島中学校はNIE活動の実践指定2年目。3年生を中心に取り組んでいた新聞活用を本年度は全学年に広げた。山城教諭は「新聞は生きた教材として授業に説得力を持たせられるし、議論もたくさん引き出せる。子どもたちの文章表現も豊かになってきた」と活用のメリットを挙げた。

 

内閣の特徴読み解く

上八万中(徳島市)

 社会科の「公民」で内閣について学んでいた上八万中学校3年生は10月21日、発足間もない岸田内閣の特徴や各省庁の役割を新聞から読み解く学習に取り組んだ。

新聞記事を丹念に読み、岸田内閣の特色について調べる3年生=上八万中

 前半は、新内閣発足を伝える同月5日付の徳島新聞を教材に▽菅前内閣との違い▽新設の大臣ポスト▽主要先進国の内閣と比べて分かったこと―などを調べ、ワークシートに書き込んだ。

 1面から社会面まで関連記事を丁寧に読み始めた生徒に、長尾亮太教諭が「見出しや図表もしっかり見よう」と新聞の伝え方の特徴をアドバイス。程なく生徒は「菅内閣より初入閣が多い」「経済安全保障担当大臣を新設」「女性閣僚がG7で最低」などに気付き、教科書にはない最新の情報で岸田新内閣の全体像に迫っていた。

 授業に先立ち、生徒は国語科で新聞記事から社会の課題を見つけ出し、解決策を考えて発表する学習を行った。

 後半は、その際に各自が取り上げた温暖化や感染症対策などの課題について、どの省庁が関わっているのかを探った。長尾教諭は、新聞に加えて教科書や資料集の活用、タブレットでのインターネット検索も奨励。欲しい情報を得る上でのメディアの適切な使い分けについても考えさせた。

 毎日、新聞を読むという中山颯斗さんは「新聞は今を伝えているから現在の状況がよく分かるし、いろんな視点で物事を見ることができる。基本を教科書で学び、新聞を応用して知識を深めたい」と話した。

 内閣の学習の総まとめとして後日、生徒一人一人が大臣となり、諸課題の解決策を提言する授業を行った。

 

意見まとめ自分事に

板野中(板野町)

 「記事を読んで、あなたはどんな意見を持ちますか」。板野中学校2、3年生の毎週金曜朝は、こんな問いと向き合うことから始まる。「新聞切り抜きシート」と題したワークシートを使い、ニュースに出てくる身の回りの出来事や課題について20分で意見をまとめる。

校則に関する記事を読み、自分の意見をまとめる生徒ら=板野中

 10月29日のテーマは、阿波っ子タイムズの連載「考えよう 話し合おう」で取り上げられた「校則の見直し」。全国的に厳しい校則が定められた背景や、時代の変化に対応していない一部の学校の事例、校則を変える際に生徒の声を取り入れることをルール化した他県の取り組みなど、多面的に紹介した記事を読んだ後、自分の考えを書き上げた。

 大半が見直しに賛成だったが「子どもの意見だけだと自分勝手な校則になる」「校則は社会に出ていろんな決まりの中で生活するための準備」といった意見も。書き終えた3年生の脇田蒼生さんは「記事を読むまで、自分の学校の校則がどうなのかなんて考えたことがなかった」と話した。

 ワークシートに使う記事は生徒がさまざまな視点を持てるように、人権や科学など幅広い分野から選ばれている。作成者の一人、西山拓志教諭は「ニュースに触れて自分自身の事に置き換え考えることで、子どもたちには社会と自分がつながっていることを実感してほしい」と目的を説明した。

 NIE 学校などで新聞を教材として活用する取り組み。「Newspaper In Education」の頭文字を取って「エヌ・アイ・イー」と読む。1930年代に米国で始まり、日本では85年の新聞大会で提唱された。思考力、判断力、表現力などを養う教材として、新聞記事を音読する、感想を書く、要約する、見出しをつける、読み比べる―などの手法で授業に活用する学校が増えている。